特集5/ケーススタディ

 次に簡単に入手可能なセメント、軽量骨材(パーライト)、水を適量混合し、補強材としてガラス繊維を入れてモルタルをつくり、鏝で空気膜の上に塗る。頂部で15㎜、下方の脚状のところは構造の強度の必要から2度塗りして30㎜とする。熟練者ふたりであれば4時間で行える作業だが、これを被災者が共同で行うことが想定されていて、これこそがSSSプロジェクトの肝といえる。共同作業が被災者にコミュニケーションの機会をもたらし、連帯感を生み、また住まいへの愛着をもたらす。それが被災による精神的、肉体的なダメージからの短期間での回復に大きく寄与するともくろまれているのである。工場生産されたプレファブユニットを専門業者が組み立ててしまう現状の方式との最大の違いがここにある。
 24時間経過後、空気を抜いて型枠をはずす。空気膜は何度でも転用が可能。これで無筋のモルタル薄肉シェル完成。空気膜を型枠とする事例は大スパンの貯蔵タンクなどで実用化されているが、それらは配筋がなされている点で異なる。外表面に漆喰を塗り、必要に応じて床や内壁を仕上げてもよく、開口部を膜材や布で塞いでもよく、頂部にトップライトや換気口を設けてもよい。
 完全に非熟練者だけで全工程の作業を行うには、いくつかの検討課題が残っているとしても、セルフビルドの応急シェルターとして、ひとつの有力な可能性を提示したプロジェクトであることは確かだ。

>> SSSシェルユニットの施工プロセス(PDF)を見る

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