特集2/レポート

終わりに

 これら3つの構築物は、長く保たれ、さらなる発展につながることが期待された。実際はどうであったか。農作業用倉庫は、完成後しばらくして放棄されてしまった。土の円柱のパビリオンは状態がよく、今も使われている。そしてガラーノ種の牡馬「ガルンチョ」は伴侶を得た。どれが幸せを得たといえるだろうか。
 自然素材と接していると、この世に確かに生きているという実感が得られる。一方、工業製品と接していると、一個の人間であるという確かな意識がもたらされる。私たちは個人主義がきわまり、産業化が進み、化石エネルギーに依存する世界に暮らし、公私両面の要求をもちつつ生きる生命体であると認識すること、それこそ、建築の本質にほかならない。

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