上越市の瞽女ミュージアム高田のトイレリフォームについてお話を伺いました。
上越市内の雁木と町家が続き、明治の最盛期で17軒89人の高田瞽女(たかだごぜ)が暮らしていたというこの地域。今回設計を担当した関由有子氏は、展示室を運営するNPO法人「高田瞽女の文化を保存・発信する会」のメンバーでもあり、いわば設計者であると同時に、施主のお一人といった立場にあります。築78年、町家特有の陰影を残すこの資料館の、来訪者視点でのトイレ改修ポイントに迫ります。
トイレは動線に配慮され、既存の場所(町家特有の細長い建物の裏側)ではなく、展示用に開放されている建屋前部の位置に新設されています。
瞽女ミュージアム高田の旧式のトイレは、しばらく使用されていませんでした。ですので、トイレはメンテナンスしなくても良い状態に保たれていました。今回の改装では既存のトイレの便槽を埋め戻し、掃除具入れに改修し、一方では建物ほぼ中央を優占していた大きな流しの一部を撤去し、そのスペースに新たにトイレを造作しました。動線もありますし、バリアフリーとして考えるなら、土間を抜けていくのでなく、このへんが良いだろうと。
最近の若い人はもう洋式トイレに違和感はまったくないじゃないですか。それはそういうものだし、あとは、味わいがあったり、きちんとしたもので仕上げれば良いと思っています。瞽女ミュージアム高田のトイレの壁面は、漆喰と、腰壁には茶の間に貼られていた杉の板を羽目板として利用しています。床には玄昌石を張っています。間接照明を天井の一辺にしつらえ、その光の広がりが壁に明暗を作るようになっています。
右:高野様(NPO法人 街並みFocus)
中:小川様(NPO法人 高田瞽女の文化を保存・発信する会)
左:関様(NPO法人 高田瞽女の文化を保存・発信する会 / せきゆうこ設計室)(左)
便器は家庭用にするか、パブリック向けにするか少し迷いましたが、どなたにも使いやすいリモコンの仕様になっている後者を選びました。直感的に誰にでもわかるようなボタンの配置になっていて、特に、とり急ぎ必要な『流す』のボタンが一目で見分けられるように、他のボタンと切り分けて配置できるようになっています。ボタンも押しやすいサイズになっています。リモコンの操作面、手すり、トイレットペーパー、それぞれが使いやすい位置にレイアウトすることもできました。
便器はタンクのないコンパクトなサイズなので、トイレという限られた空間全体をスマートに仕上げることができました。凹凸がないので拭きやすいですし、ホコリがたまりません。掃除しやすいように、便器と背面の壁のスペースにも気を使いましたね。
1回の洗浄水量が4.8リットルというのは、かなりの節水が期待できると思っています。トイレの音を他人に聞かれたくない『音姫』による節水効果も期待できますね。
瞽女の絵画や資料を見るために来場される方は女性が多いと思います。ですので、健康的で清潔感のあるトイレにするために、気にしすぎるくらい気にしても良いと思っています。そう考えると、その都度ノズルが自動的に洗浄されたり、座った時点でミストが流れる便器は、とても理にかなっていますね。建物を管理するスタッフサイドからみても、メンテナンスの手間が少なくなり、とても助かっています。
北陸新幹線が開設されたり、これから東京オリンピックを前に、国内だけでなく、海外からいらっしゃる方も多いと思います。ご高齢の方もご使用になられると思います。TOTOを選んだことにより、どなたにも気兼ねなく使っていただけるトイレに仕上がったと思っています。
[大便器] 新しいトイレはミュージアム来場者用に、建物ほぼ中央に設けられています。建物と調和した落ち着いた雰囲気に仕上がっています。
[操作パネル] 最適な位置に設置された洗浄ボタン。手すりも、どなたにも使いやすい高さに取り付けられています。
操作パネルは乾電池不要でボタンを押す指の圧力のみで発電し、その電力で動作します。
設置施設 | 瞽女ミュージアム高田(築78年・トイレを新設) |
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関係者 | 高野 恒雄(NPO法人 街並みFocus) 小川 善司(NPO法人 高田瞽女の文化を保存・発信する会) 関 由有子(NPO法人 高田瞽女の文化を保存・発信する会 / せきゆうこ設計室) |
使用機器 | |
大便器 | CES957M |