観光庁インタビュー

国土交通省 観光庁
外客受入参事官付課長補佐(総括)
福嶌 教郷 さん(2018年10月時点)

2030年、インバウンド6,000万人の受け入れを目指す

2017年の訪日外国人旅行者は約2,869万人ですが、オリンピック開催の2020年までに4,000万人、さらに2030年には6,000万人を目標にしています。一方、旅行消費額も重要です。2017年の訪日外国人旅行消費額は約4兆4,000億円まできていますが、2020年には8兆円、2030年に15兆円を目指しています。

訪日外国人旅行者数と旅行消費額推移

出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」「明日の日本を支える観光ビジョン」をもとに作成

人口1人当たりの年間消費減額分は年間8人の訪日客誘引でカバー可能

— 観光施策の推進は今後、地域にどのような効果をもたらすでしょうか。

日本全体の人口が減少する中で、これから各地域がどうやって生き残っていくかが大きな課題です。そこで定住人口では限界があるため、交流人口をいかに増やしていくかがポイントになってきます。例えば、人口が1人減ると、一人当たりの年間消費額約125万円が減少しますが、滞在期間が長く、長距離の旅行の外国人旅行者を8人集めると人口1人分の減少をカバーできるのです。実際、地方へ行く外国人のお客様の数は伸びています。地方へ訪日外国人旅行者を呼ぶことが、今後の日本の地域の経済にとってよい効果をもたらすと考えます。

●観光交流人口増大の経済効果(2017年)
(暫定値)

【DOWN】定住人口1人減少分1人当たりの年間消費額125 万円定住人口1億2,679 万人【UP】外国人旅行者8人分1人当たりの年間旅行消費額15 万3,921円 年間旅行消費額4.4 兆円 訪日外国人旅行者数2,869 万人
●定住人口は2017年7月1日現在人口推計(総務省)、定住人口1人当たり年間消費額は2017年家計調査(総務省)による。 ●旅行消費額の訪日外国人旅行は訪日外国人消費動向調査(2017年)より算出、国内旅行は旅行・観光消費動向調査(2017年)より算出。 ●訪日外国人旅行者はJNTO(2017年)発表数値、国内旅行者は旅行・観光消費動向調査(2017年)より算出。 ●訪日外国人旅行者1人1回当たり消費額は訪日外国人消費動向調査(2017年)、国内旅行者(宿泊/日帰り)1人1回当たり消費額は旅行・観光消費動向調査(2017年)より算出。 ●定住人口1人減少分に相当する旅行者人数は、定住人口1人当たり年間消費額を訪日外国人旅行者または国内旅行者1人1回当たり消費額で除したもの。

出典:国土交通省 観光庁 資料

トイレ整備は受入環境整備の第一歩

— 観光推進はプロモーションと受入環境整備の両輪で

受入環境整備は、プロモーションに比べて、今まであまり観光に携わる方々に重要視されていませんでした。それが、訪日外国人が来始めて、不満の声が上がってくる中で、意識が変わってきています。トイレでいえば、宿泊施設のトイレが和式で使い方がわからず、困ったという声もあります。日本人にとっては当たり前でも、外国人の目から見ると、直すべきところがかなり見えてきています。今後はプロモーションと受入環境整備を両輪でやっていただくことが重要だと思います。

— 訪日外国人が来ている今こそトイレを変えるチャンス

トイレの問題で、ポイントは二つあると思います。一つはきれいかどうか。二つ目は、器具そのものがお客様にとって使いやすいかどうかです。前者は管理者の問題ですが、後者はハード面で根本的に直していかなければいけない問題です。最近は、だんだん日本人も含めて洋式化に向かってきています。外国からのお客様が増えているタイミングで、一気に日本のトイレ環境を変えていくよい機会ではないかと思っております。

— 受入環境整備は日本人の生活水準も上げていく

訪日外国人の満足度を高めるためには、さまざまな環境整備を行う必要があります。特にトイレ環境は、旅行者が気兼ねなく観光を楽しむのに集中する上で重要になっていくと思います。受入環境整備は、訪日外国人旅行者のためと言いつつ、整備された場所は、日本人の旅行者や地元の方々も日々の生活の中でお使いになるものです。合わせてわれわれ日本人の生活水準を上げていくという考え方で取り組んでいただくことが重要ではないでしょうか。

観光地の公衆トイレ(大便器)における和式・洋式率
「訪日外国人旅行者受入を想定した
観光地における公衆トイレの現状調査事業」結果

  • ● 47都道府県・1,741市区町村全て
    (政令指定都市行政区は除く)を対象に、
    Web アンケート調査を実施
    (回答期間: 2017. 2.13~3.3
    回答率:都道府県・市区町村ともに80% 超)
  • ● 観光地における公衆トイレの現況情報を
    749自治体から合計3,872 件
    (大便器数は24,524 基)回収したところ、
    当該大便器の和式率は4 割を超えていた
    (和式率: 42.0% 和式大便器数:10,181基)
  • ● 洋式便器が一定程度漫透している都道府県も存在する一方、
    和式便器が過半数を超える県は全国で10カ所に上った

※調査で回答の得られた総数であり、各都道府県に所在する全公衆トイレ全体の総数とは異なる。

洋式トイレ58.0% 和式トイレ42.0%

出典:観光庁 観光地における
公衆トイレの現状調査(平成28 年度)

訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業費補助金(地方での消費拡大に向けたインバウンド対応支援事業(公衆トイレ))

旅行者が訪日リピーターとなってもらえるよう日本で快適に過ごしていただくための環境整備の一環として、訪日外国人旅行者が利用しやすい観光地の公衆トイレ整備等に 要する経費の一部について支援1. 補助対象事業:広く無料で開放されているトイレ2. 補助対象事業者:地方公共団体、民問事業者および協議会等3. 補助率:国:1/3 4. 補助対象経費 基本整備項目実施の場合に限り、追加整備項目も補助対象となる

出典:観光庁「平成30年度訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」説明資料

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