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中川エリカ 展 JOY in Architecture

予習コラム
「建築のすそ野を広げたい」という想いで設立された編集事務所Office Bungaの磯達雄さんの視点から、「中川エリカ展」をより深く楽しむのに役立つ、これまでの歩みや背景を紹介します。
中川エリカ展をより深く楽しむためのガイド(1)
日本の建築界で若い世代の活躍が目に付くようになっている。新しい波を意識するきっかけとなったのが、2018年にTOTOギャラリー・間で開催された展覧会「en[縁]:アート・オブ・ネクサス 第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館帰国展」だった。この展覧会は「第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」の日本館展示を再構成したもの。全体テーマの「REPORTING FROM THE FRONT(最前線からの報告)」にこたえるべく、当時まだ30歳代前後だった建築家たちが出展者として選ばれた。
彼らに共通する点は何か。帰国展に併せて開催されたシンポジウムを書籍化した『共感・時間・建築』(編著:山名善之+塚本由晴)によれば、それは建築の「規範」が失われた現代に、人、モノ、地域のつながりをきっかけとして、ささやかながらも着実に社会を変えていくことを目指している点だという。この姿勢はヴェネチアの展示を見た世界中の人たちから共感を得て、国別部門の特別表彰も受けた。
この展覧会に、以前、勤務していたオンデザインの西田司さんと共同で参加したのが中川エリカさんだった。出展したのは、壁柱で持ち上げた個室群の下に共用の広場を設けた「ヨコハマアパートメント」。敷地の外に広がる環境的な要素を積極に取り込もうとした態度は、「en[縁]:アート・オブ・ネクサス」の理念を具現化したものだったと言える。同世代を代表する建築家として、同じく出展者だった増田信吾+大坪克亘らとともに、中川さんは飛び出した。
en[縁]:アート・オブ・ネクサスで展示された「ヨコハマアパートメント」模型(共同設計:西田司/オンデザイン、竣工:2009年)
個人の専有面積より広い共用の「広場」は近隣住民にも開かれ、街の中の小さなパブリック空間の役割も果たす。
© Nacása & Partners Inc.
その後も中川さんは数々の展覧会に参加。いずれも巨大な模型による展示で話題を集め、U-35(Under 35 Architects Exhibition)ではゴールドメダルを獲得した。今回、TOTOギャラリー・間では、これまでを超える広さの会場に主要プロジェクトのすべての模型が揃う。独立後のスタディの現時点での集大成となる展示だ。と同時に、これからの活動で建築に込めようとしているものも現れている。それがタイトルとなっている「JOY」だろう。
なお、中川エリカさんの人となりに関しては、TOTO出版のWEBコラム「建築家・中川エリカを知る」が公開されているので、そちらもぜひお読みください。
TOTOギャラリー・間で開催中の「中川エリカ展 JOY in Architecture」
© Nacása & Partners Inc.
 
磯達雄 Tatsuo Iso
編集者・1988年名古屋大学卒業。1988~1999年日経アーキテクチュア編集部勤務後2000年独立。2002年~20年3月フリックスタジオ共同主宰。20年4月から宮沢洋とOffice Bungaを共同主宰。
https://bunganet.tokyo/
磯達雄 Tatsuo Iso
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