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中川エリカ展 JOY in Architecture

中川エリカ展 ギャラリートーク「Joy in 3 Critiques / 建築批評におけるよろこび」
第一線で活躍する建築家と中川エリカ氏が、展覧会の現場にて、中川氏の建築思想に深く関係する問題意識を手がかりに語り合います。双方向の批評を通じて、世代を超えた「建築のよろこび」「建築批評をする/されるよろこび」を見出そうとする試みです。
開催概要、出演者
新型コロナウイルス感染拡大防止の一環として、ギャラリートークは当ウェブサイト上でオンライン公開とします。
第1回:2021年2月9日(火)〜公開終了

出演:西沢大良氏(建築家) × 中川エリカ氏
テーマ:30代でつくるべきもの

第2回:2021年2月19日(金)〜公開終了

出演:西沢立衛氏(建築家) × 中川エリカ氏
テーマ:スタディについて

第3回:2021年3月1日(月)〜公開終了

出演:乾 久美子氏(建築家) × 中川エリカ氏
テーマ:リサーチと設計

《ご注意》
オンライン公開は2021年4月末で終了しました。
ギャラリートーク ゲストプロフィール
第1回ゲスト
西沢大良(にしざわ たいら)
略歴
1964年
東京都生まれ
1987年
東京工業大学卒業
1987年~1992年
篠原一男・坂本一成・入江経一に師事
1992年
西沢大良建築設計事務所を主宰
2013年~
芝浦工業大学教授
主な作品
「砥用町林業総合センター」(2004年)、「沖縄KOKUEIKAN」(2006年)、「駿府教会」(2008年)、「宇都宮のハウス」(2009年)、「直島宮浦ギャラリー」(2013年)、「今治港・駐輪施設」(2017年)、「青梅麦酒」(2018年)など。

主な受賞
住宅建築賞金賞、日本建築家協会新人賞、AR-AWARDS 最優秀賞(英国)、ART & FORM AWARDS 最優秀賞(米国)、BARBARA CAPOTINE 国際建築賞(イタリア共和国)など。
西沢大良
第2回ゲスト
西沢立衛(にしざわ りゅうえ)
略歴
1966年
東京都生まれ
1990年
横浜国立大学大学院修士課程修了
1990年
妹島和世建築設計事務所入所
1995年
妹島和世と共にSANAA設立
1997年
西沢立衛建築設計事務所設立
現在
横浜国立大学大学院建築都市スクールY-GSA教授
主な作品
金沢21世紀美術館*、森山邸、House A、ニューミュージアム*、十和田市現代美術館、ROLEXラーニングセンター*、豊島美術館、軽井沢千住博美術館、ルーヴル・ランス*、済寧市美術館 等。

主な受賞
日本建築学会賞、村野藤吾賞、藝術文化勲章オフィシエ、吉阪隆正賞、プリツカー賞*
(*はSANAAとして妹島和世との共同設計及び受賞)
西沢 立衛
©Office of Ryue Nishizawa
第3回ゲスト
乾 久美子(いぬい くみこ)
略歴
1969年
大阪府生まれ
1992年
東京藝術大学美術学部建築科卒業
1996年
イエール大学大学院建築学部修了
1996~2000年
青木淳建築計画事務所勤務
2000年
乾久美子建築設計事務所設立
2000〜2001年
東京藝術大学美術学部建築科常勤助手
2011〜2016年
東京藝術大学美術学部建築科准教授
2016年〜
横浜国立大学都市イノベーション学府・研究室 建築都市デザインコース(Y-GSA)教授
主な建築作品と受賞歴
アパートメントI(2007、新建築賞)、フラワーショップH(2009、グッドデザイン金賞、JIA新人賞、BCS賞)、共愛学園前橋国際大学4号館Kyoai Commons(2012、グッドデザイン賞)(2015、日本建築学会作品選奨)、七ヶ浜町立七ヶ浜中学校(2017、日本建築学会作品選奨)、釜石市立唐丹小学校・釜石市立唐丹中学校・釜石市立唐丹児童館(2018、グッドフォーカス賞(復興デザイン)ならびにベスト100選出)(2019、復興デザイン会議 第1回全国大会「復興設計賞」受賞)、延岡駅周辺整備プロジェクト 延岡市駅前複合施設エンクロス(2019、WADAA2019「WADA賞」受賞、2020年日本建築学会賞(作品) 受賞)、「宮島口旅客ターミナル」など

その他の受賞
第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞(2012、日本館協働受賞)
乾 久美子
ギャラリートーク開催報告
 中川エリカ展に併せたギャラリートークは、中川さんが建築の道を先に歩む先輩として尊敬し、またその建築観に共感をいだいている西沢大良さん、西沢立衛さん、乾久美子さんを招いて対談形式+オンライン配信で行われました。
 TOTOギャラリー・間での個展の開催にあたって中川さんには、これまでの建築を乗り越え、新しい枠組みを構築していこうと設計に取り組む自身の姿勢をありのままに表現することで、建築家たちのそうした葛藤のプロセスを経て建築の歴史が更新され続いていくのだということを伝えたい、という思いがありました。そのため本ギャラリートークも、中川エリカという建築家を題材に自ら「公式な場で批判を受ける」(本人弁)ことを引き受け、建築を巡るリアルな言葉を引き出す批評の場として企画されました。
 第1回は「30代でつくるべきもの」と題された西沢大良さんとの対談。西沢さんは中川さんの代表作「桃山ハウス」と「丘端の家」を採り上げ、いわく「(新しい感性という意味での)野蛮」な設計手法の中に、中川さんの目に見える現実世界をそのまま受け入れ認めようとするインクルーシヴな態度を歴史的観点から評価し、中川さんが今30代で課題に向き合っている態度がその後のやるべきことの土台となる、と語りました。
 第2回は「スタディについて」と題された西沢立衛さんとの対談。西沢さんはスタディを行う意味についてルイス・カーンの言葉を引用し、スタディとは「原初(Beginnings)」が徐々にあらわになっていく行為であり、「家とは何か」「暮らすとはどういうことか」等という根源的な命題を明らかにしていくことだとしました。そして建築家はスタディを行うことで、自分自身の建築についての偽りのない言葉を獲得していくのだと語りました。
 第3回は乾久美子さんとの対談「リサーチと設計」。乾さんは公共建築の在り方を考える前提として行ったリサーチ(TOTOギャラリー・間「小さな風景からの学び」展、2014年)で「人が自然に集まる場所」の実例を採集したことを挙げて、バラバラな考えをもった人びとが一緒に居られる根拠や共通概念(コモン・リソース)をかたちとして浮かび上がらせることが建築の力であり、モノとして定着させていくことが設計ではないかと語りました。
こうして3人が語る言葉は建築家個人への批評の範疇を超えて、建築設計の核心に迫るものとなりました。
会期中には、このギャラリートークに呼応するかのように、本展を会場として東京理科大学西田司研究室による「出張ラジオ」(全4回)や京都大学平田晃久研究室の特別授業(アフタートークのみ公開)が行われてYouTubeで配信され(2021年4月末まで公開)、さまざまな議論が連続したシリーズのようになりました。これらの場をつくってくださった皆様に感謝申し上げるとともに、展覧会を通して建築批評の場がギャラリーの外にまで繋がって皆のものになっていく展開にこそ、中川さんの企画の意図があったのではないかと感じています。(主催者記)
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