TOTOグループが目指す姿に、一歩一歩近づいていくために。
努力の積み重ねによって実った成果をもとにいかに飛躍し、
課題をどのような戦略で乗り越えるのかを具体的にお伝えします。
私たちはステークホルダーの皆様と一緒に未来への新しい価値を共創し、
社会から必要とされる企業であり続けます。
不確実な時代こそ企業理念と長期目標が道しるべに
自然災害や目まぐるしい経営環境の変化によって、将来を見通しにくい時代が続いています。短期・中期の緻密な経営計画を掲げたとしても、思いがけない波にひっくり返されかねないという不安定な状況から、TOTOグループは2021年4月に長期目標を策定しました。それが、2030年に「きれいで快適・健康な暮らしの実現」「社会・地球環境への貢献」を目指す「共通価値創造戦略TOTO WILL2030」です。足元で何が起ころうとも、世界中の拠点で働く約35,000人のグループ員は「企業理念」という北極星を道しるべとしながら、「きれいと快適・健康」「環境」「人とのつながり」という3つのマテリアリティに取り組んでいきます。「2030年、2050年の長期目標は必ず達成できる」と一人ひとりが信じて日々行動できていることが、TOTOグループの大きな強みです。「企業理念」は単なる概念ではなく創業から引き継ぐ「心」であり、この揺るぎない心に即して「体」を動かすことが長期目標の実現につながると考えています。
TOTOグループは、社会の一員として事業活動を長く続けるほど「持続可能な開発目標(SDGs)」に貢献することができ、社会における存在意義が高まっていく企業であると考えています。目指すのは、地球環境への負荷を低減し豊かで快適な社会を実現しながら、経済的に成長していくサステナビリティ経営。社会課題や環境課題の解決につながる価値ある商品やサービスを提供することと、そして、その「影」としての利益、どちらも妥協せず追求していきます。2030年に向けた温室効果ガス排出削減目標としてSBTイニシアチブによる「1.5℃目標」の認定を取得したのも、より厳しい目標に挑んで必ず達成するという私たちの宣言でもあります。
駆け抜けたSTAGE1、成果と課題を振り返る
WILL2030では、2030年までに長期目標を達成する道のりを、「STAGE1・2・3」に分けて組み立てています。成果は単年度ではなく、各STAGEの連続量で捉えて評価します。それを振り返る節目がSTAGEという考え方です。2021年度から2023年度のSTAGE1を総括すると、社会的価値・環境価値指標はおおむね目標をクリアしたものの、営業利益率、ROA、ROE等の収益性・効率性の指標は目標に届きませんでした。市況の悪化等外部要因はあったものの、逆境を跳ね返す創意工夫やスピードが足りなかったと反省しています。STAGE1で成果が出たものは一層ストレッチし、成果が出なかったものは進め方を変え、STAGE2で挽回を図っていきます。
成長セグメントをドライバーに、TOTOグループを牽引
STAGE1における成果の一つは、グループ員のマインドと行動面の「目合わせ」ができてきたこと。長期目標から逆算して「今何をやるべきか」を一人ひとりが考え、より早く動き出せています。私を含めた経営陣が国内外の現場社員からマネジメント層をはじめとしたさまざまなグループ員と顔を合わせて現場の課題を語り合う「拠点訪問」や、私と数名のグループ員が直接「対話」する場を持ち続けていることにも意義があると確信しています。私個人だけでも、就任以来、のべ約2,000人のグループ員と語り合ってきました。長期目標や企業理念がグローバルで広く深く共有されていることを実感するのは、既存のルールが通用しない危機的状況に直面したとき。STAGE1の3年間に自然災害やパンデミック、サプライチェーンの断絶など予期せぬ危機に直面しましたが、瞬時にお互いをリカバーしようと動き出すグループ員の姿と自律的な一体感がより進化しつつあると手応えを感じています。
業績面の成果は、米州住設事業の長年の悲願であった温水洗浄便座「ウォシュレット」に本格的な普及の兆しが見えてきたことです。TOTOが米州にウォシュレットを輸出し始めたのは1980年代。当初、ウォシュレットは米州市場でなかなか認知されませんでした。ウォシュレットの価値がなかなか伝わらず医療機器と誤解されることもしばしば。代理店の方の自宅に取り付けて、体験した機能や価値について周りに語ってもらうなど、できる限り体験の場をつくり、認知拡大を図るために極めて地道な種まきを続けてきました。2010年代半ばからは、SNSが発達する中で日本を訪れた方々が日本での使用体験を発信し始め、eコマースや大手量販店等の購入する場を増やすことでウォシュレットのニーズが高まりました。そして2020年以降のコロナ禍におけるトイレットペーパー不足を機に、一気に火がついたのです。
「日本市場で経験した大ヒットと同じ、いやそれを上回る」と感じる勝機が訪れようとしています。温水洗浄便座が普及の入口に立った今こそ迷わず、加速するとき。TOTOは機能やデザイン、品質を長年磨き上げ続け、累計出荷台数6000万台を超え、世界で最も多く温水洗浄便座をご提供してきた企業としての自信と知見をもとに、市場を拡大させていきます。STAGE2で、より大きな成長を実現するために資本の配分や利益の再投資を行い、海外住設事業の最大の柱となるよう一気に飛躍させます。
また、米州住設事業と同様に、大きな躍進を見込んでいるのが半導体製造装置分野で高品質・高精密セラミック商品を展開するセラミック事業です。TOTOグループの新領域事業として辛抱強く挑戦を続け、さまざまな変革を実行してきました。その結果、STAGE1の2021~2022年度に大きく花開いたのですが、それ以前は、市場成長の波に乗り切れなかったという大きな反省があります。セラミック事業は住設事業とは大きく異なり、別次元のスピードが必要とされますが、製造等の社内体制がそのスピードに追随できませんでした。この状況に対して、2020年の中津工場内の新棟稼働に合わせスマートファクトリー化の強力な推進等抜本的な改革を実行した結果、対応スピードも上がり、営業利益率30%を超える高収益体制を確立することができました。2023年度は半導体業界特有のシリコンサイクルによって市況が低迷しましたが、2030年に向けて市場が再拡大することは間違いありません。半導体業界の高度化やスピードに応え得る開発と製造の環境を整え、次なるチャンスを掴むために先を見据えた積極的な投資を行い、準備を徹底していきます。
加えて、各国・地域での経済成長が見込めるアジア・オセアニア住設事業も大きな成長を期待できる市場です。米州住設事業、セラミック事業、アジア・オセアニア住設事業の成長セグメント3本柱を成長エンジンとして、2030年に向けてTOTOグループ全体を牽引します。
ベースセグメントで、TOTOグループを下支え
今まで海外の成長ドライバーであった中国大陸住設事業は不動産市況低迷の影響を受け、目標に遠く届かない実績となりました。中国大陸住設事業は30年以上にわたって成長してきており、TOTOブランドが高級ブランドとして醸成されたことは大きな財産です。これまでの成長の歴史の中で、住宅ストックならびにTOTO商品のストックは膨大に存在しています。今後、成長市場から成熟市場へ移行していく中で、日本のリモデル市場での約30年の経験を活かしながらリモデル需要開拓に舵を切り、リモデル事業を強化していきます。その結果、基盤事業として日本住設事業とともに、TOTOグループのベースを支えていきます。
「利益の成長」と「利益の質」を追求
STAGE1での最大の反省点は、収益性と効率性を悪化させたことです。収益性においては、前述のとおり成長セグメントを一層ストレッチさせることで改善していきます。一方、効率性においては、資本コストを上回るハードルレートでの管理の強化や、コロナ以降一時的に増加させた棚卸資産の最適化の加速など、投下資本効率を向上させるサイクルを磨いていきます。これまで以上に資本効率を意識し、成長セグメントに人とモノと資金を投じ、メリハリを効かせた事業運営を目指します。営業利益の大きさだけでなく、「利益の成長」や「利益の質」を追求し、再投資の配分を見極めていきます。TOTOグループ一丸で収益性と効率性の向上に今まで以上に強力に取り組むことで、目標を必ず達成できると確信しています。
幸福な未来を描く企業として必要とされ続ける
TOTOグループの良いところは、企業理念というバトンを代々受け継ぎ、100年以上の長い時間の中で逆境に抗いながらも成長する企業であり続けていることです。企業理念や、初代社長が二代目社長に宛てた書簡の「どうしても親切が第一」という言葉を歴代社長から大切に引き継ぎ、17代目の社長である私も次の世代に伝えています。先日、入社したばかりの経験者採用の社員から、「TOTOの企業理念は海外のグループ員にまで、なぜこれほどまでに浸透しているのか」と尋ねられました。米州のアフターサービスの社員に会った際、しきりに企業理念について語っていたことに驚いたと言うのです。その米州の社員は研修のために来日し、TOTOメンテナンスの先輩とお客様のご自宅へ伺ってトイレ修理の一部始終に立ち会い、お客様が満足される姿に感激したそうです。企業理念は唱和して終わるものではありません。お客様のために行動する社員の背中によってグループ内に受け継がれ、世界中で「TOTOらしさ」として共有されているのです。
2023年は、ドイツ・フランクフルトで開催された世界最大の国際見本市ISH2023で日本企業として「Forum0」に初出展するなど喜ばしいニュースが相次ぎました。その中で何よりもうれしかったのは、とある調査においてTOTOが「その企業や商品・サービスは、これからの社会をより良く変えると思うか」という指標で1位に選ばれたことです。快適で衛生的な生活に寄与する商品やサービス、環境課題の解決への貢献だけでなく、未来社会を幸福にする企業としての価値も認めていただいたのです。これからも社会をより豊かにしていくための事業活動と社会貢献活動を通じて「その国・地域のTOTOになる」ことで、世界中の国や地域から必要とされ続けるよう努力します。
「需要家の満足」のために恐れず行動する人を
より幸せな未来社会をつくる企業として社会から必要とされ続けるには、初代社長の言葉「需要家の満足」を一歩先に捉える必要があります。そこでSTAGE2からマテリアリティに「健康」を加えて「きれいと快適・健康」としました。トイレやお風呂は、使用しながらさまざまなヘルスデータを収集できる機器です。健康維持というと眉間に皺を寄せて頑張るイメージがつきものですが、お客様によりきれいで快適、健やかな毎日をお届けするために、日々快適に使いながら体調の小さな変化にも気づけるような商品の研究開発を一層充実させていきます。きれいと快適、健康の両立にこそTOTOグループだからこそ創造できる新たな価値があるという想いで、マテリアリティに「健康」を加えました。
お客様がまだ気づいていない価値をいち早く届けるために、デジタルテクノロジー(D)を活用した変革(X)を推進していきます。お客様に提供する価値のバリエーションを広げる「商品のX」、スマートファクトリー化による「製造のX」、人と人の対話や接点を深める「人のX」。3つのXによって価値創造のスピードと効率性をさらに高めていきます。
また、これまで運用してきた社員から経営層に対する論文形式での直言のしくみと並行して、今年度から新しい事業の種となるアイデアを社員から募集し、事業化に向けた支援を行う社内公募プロジェクトをスタートさせます。グループ員に挑戦して欲しいのは、柔軟なアイデアで行動を起こすこと。世の成功事例の影に数えきれないほどの挫折があるように、あらゆる経験は成功の糧になります。誰も見たことのない未来を描ける人は、失敗や評価を恐れず挑戦できる人です。そんな「個」の力が約35,000人分集まり、周りを巻き込みながら多様な個性や経験をぶつけ合うことで、TOTOグループの「組織」の力は無限に成長します。
「TOTOがあってよかった」と信頼していただけるように
私たちの事業活動はステークホルダーの皆様に支えられ、協業しながら成り立っています。まず、私たち自身が感謝の気持ちを持って誠実に向き合っていかなければならないということが原点です。WILL2030で掲げたマテリアリティの一つ「人とのつながり」で示しているように、各ステークホルダーの皆様と真摯に向き合い、それぞれの皆様の価値向上に努めていきたいと考えています。その結果、TOTOファンになっていただきたいと願っています。
お客様へは、きれいで快適・健康な商品だけではなく、サービス面でも寄り添う活動を強化し、生涯TOTOファンでいていただけるよう努めていきます。株主・投資家の皆様とは、ご期待に応えられる業績、還元はもちろんのこと、非財務情報等を含めたさまざまな対話を通じて、TOTOグループの成長ストーリーを深くご理解いただき、信頼関係を高めていきます。お取引先様とは、より強固なパートナーシップを構築し、環境や人権への取り組みなどの目標をともに定めて推進し、共存共栄を実現します。また、私たちの事業活動は地域社会の方々のご理解なしには成り立ちません。より良い関係を築いていくために、各地域で従前にも増した取り組みを行っていきます。
そして、これらステークホルダーの皆様との良好な関係を築くのは他ならぬグループ員です。彼ら一人ひとりが誇りと喜びを持って仕事に取り組み、仲間と助け合える環境で長く働けることに「満たされている」状態は、TOTOらしいものやサービスに表れ、働く人の間にもいい循環をもたらします。TOTOグループの源泉は「人」です。人を大切にすることはすべてのステークホルダーを大切にすることにも通じます。
世界中の国や地域で、「TOTOがあってよかった」と信頼され続ける企業であるために。社会のために、お客様のために、全グループ員が心を一つにして、明るい未来を切り拓いていきます。
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