ニュースリリース
2026年2月25日
商品情報/洗面まわり
鏡への水垢固着を防ぐDLC成膜技術を確立して累計200万枚以上出荷し、DLCの民生分野への用途拡大に貢献したことが高評価
TOTO株式会社(本社:福岡県北九州市、社長:田村 信也)は、「水垢汚れを抑止するDLCコーティング技術とそれによる浴室鏡の開発」で、「第18回 岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」の最高賞である「大賞」を受賞しました。岩木賞の受賞は初めてとなります。
岩木賞は、表面改質およびトライボコーティング※1分野で著しい業績を上げた個人・法人・団体を顕彰するもので、同分野で功績を残した故・岩木正哉博士の偉業をたたえて2008年6月に創設されたものです。第18回岩木賞贈呈式は、理化学研究所(和光地区)で2026年2月20日(金)に執り行われました。
今回受賞したのは、TOTOの主要なシステムバスルームに2016年2月から標準搭載されている「お掃除ラクラク鏡」に採用されている技術です。同鏡は、鏡の表面にコーティングされた「DLC=ダイヤモンドライクカーボン※2」の極薄膜(厚さ10ナノメートル)により、鏡の見え方や明るさを維持したまま水垢の固着を防ぎ、水垢がついても簡単なお手入れで落とすことができます。
鏡へのDLC成膜は前例がなく、水垢除去に効果的な組成、成膜方法ならびにオリジナルの生産設備を装置メーカーと共同開発し、グループ会社であるTOTOマテリア土岐工場(岐阜県土岐市)にDLC成膜ラインを構築。生産開始から10年で累計200万枚以上の「お掃除ラクラク鏡」を出荷してきました。
DLCは自動車部品や機械部品などに用いられることが多いなかで、TOTOは日常的に目に触れる機会がある浴室の鏡にDLCコーティング技術を適用して機能改善し、普及させてきました。この取り組みが高く評価され、今回の大賞受賞に至りました。
TOTOは、きれいと快適・健康をもたらし、環境に配慮した水まわり商品「サステナブルプロダクツ」を世界中のお客様へ提供するため、新しい価値提供ができる技術開発を今後も進めてまいります。
※1:摩擦や摩耗、潤滑などを扱う「トライボロジー」と、表面処理技術である「コーティング」を融合させた技術分野。材料の表面に機能的な薄膜を形成することで、滑りやすくする(低摩擦)、減りにくくする(耐摩耗)、汚れなどを付着しにくくする(耐凝着)といった特性を付与する技術の総称 ※2:ダイヤモンドと黒鉛(グラファイト)の中間的な構造を持つ、炭素を主成分とする非晶質の薄膜素材。「硬さ」と、薬品などに侵されにくい化学的な「安定性」を併せ持つ



※3:2012年発売の表面をDLC膜で覆っていない鏡 ※4:長時間放置された場合を想定し、社員宅における3ヵ月のフィールドテストの汚れ具合を、当社オリジナルの散水試験機により再現 ※5:日常のお手入れ想定で清掃(TOTO調べ)
開発の背景:浴室鏡の水垢固着メカニズム
浴室鏡に固着する白い汚れ(水垢)には、水道水中のケイ酸に由来する「シリカ」が含まれています。
鏡のガラスも同様に「シリカ」を主成分とするため、鏡についた水滴が乾燥する過程で、水垢成分と鏡の表面が化学的に結合(脱水縮合)し、一体化して強固に固着してしまいます。
これが、スポンジ等での日常清掃では除去が困難な汚れの原因となります。

※6:走査電子顕微鏡(SEM=Scanning Electron Microscope)。光の代わりに電子線で試料表面を走査(スキャン)し、凹凸や形状をナノレベルで観察できる
技術の特長①:DLC膜による水垢の固着抑制
この課題に対し、TOTOは「DLC」に着目しました。DLCはダイヤモンドと黒鉛(グラファイト)の中間的な構造を持ち、高硬度かつ化学的に安定していることが特長です。
本技術では、鏡の表面に10ナノメートル(10万分の1ミリ)という極薄のDLC膜をコーティングすることで、鏡の光学性能(見え方)を維持したまま、水垢と鏡表面の化学的な結合を物理的に遮断します。これにより、水垢の固着を防ぎ、簡単な清掃での除去を可能にしました。

技術の特長②:清掃性と耐久性の両立
浴室鏡への適用においては、「水垢除去性」と「耐久性」の両立が技術的課題でした。
DLCは炭素と水素で構成されています。膜中の水素含有率を高めると水垢は落としやすくなりますが、一方で紫外線による劣化(損耗)が進みやすくなるというトレードオフの関係があります。
TOTOは、プラズマを用いた成膜プロセス(高密度プラズマ生成と基材への高電圧印加の併用)を開発し、膜中の水素含有率を精密に制御することに成功しました。
これにより、長期間の浴室使用に耐えうる耐久性と、優れた水垢除去性を両立させました。

※7:化学気相成長(CVD=Chemical Vapor Deposition)。目的となる薄膜の原料ガスを供給し、エネルギーを与えて化学反応により膜を堆積する方法
量産化技術の確立と普及
DLCコーティングは工具や自動車部品など比較的小型な部材への適用が一般的ですが、浴室用の鏡は最大で横幅2メートルに及びます。
TOTOは、大面積の鏡に対して高速かつ均一にDLCコーティングが可能なインライン式成膜装置を装置メーカーと共同開発しました。
これにより、TOTOの主要なシステムバスルームへの標準搭載を実現し、累計200万枚以上の出荷を達成しました。



お気に入りに保存しました