ニュースリリース
2025年10月9日
調査・受賞・その他
〜ミストシャワーの高精度流体シミュレーションを実現したことが高評価〜
TOTO株式会社(本社:福岡県北九州市、社長:田村 信也)は、スーパーコンピュータ「富岳」を利用して実施した研究「水まわり住宅設備機器のためのミスト状微小水滴飛散シミュレーション」で、「HPCI※1利用研究課題優秀成果賞」を受賞しました。同賞の受賞は2022年に続き、今回で2回目となります。
本研究は、HPCIシステム利用研究課題(課題番号:hp230239)を通して、理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」の計算資源の提供を受け、2023年10月1日から2024年9月30日にかけて実施したものです。
TOTOは、水まわり商品の開発に活用するため、水と空気が混在する(気液二相流)流体シミュレーションソフトウェアの独自開発に2000年から取り組みはじめ、2010年代半ばから衛生陶器(便器)の商品開発に全面的に活用しています。
今回受賞した研究は、ミストシャワーの開発に高精度流体シミュレーションを適用させることを目的とするものです。TOTOの独自ソフトを「富岳」に最適化させた上で、ミストシャワー生成用のノズルから円錐状の水膜が形成され、先端から分裂することで0.1mmレベルのミスト水滴が生成し、ミスト水滴が空間を飛散するまでの一連のシミュレーションを実現しました。さらに、水・空気に「汚れ」を加えた三相流シミュレーションにより、皮膚の溝の汚れの洗浄力を評価するシミュレーション技術を構築しました。
なお本研究は、2025年10月23日(木)~24日(金)に開催される「第12回『富岳』を中核とするHPCIシステム利用研究課題 成果報告会」[主催:一般社団法人高度情報科学技術研究機構(RIST)]で成果発表および表彰・講評が行われます。
TOTOは、「きれいと快適・健康」と「環境への配慮」を両立した水まわり商品「サステナブルプロダクツ」を世界中のお客様へ提供するため、独自のソフトウェア開発を含めたシミュレーション技術を今後もより一層向上させてまいります。
※1:「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(High Performance Computing Infrastructure)」の略称。国内の大学や研究機関のスーパーコンピュータやストレージを高速ネットワークで結んだ共用計算環境基盤。HPCIの計算資源として中核をなしているのが、理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」
ミスト生成シミュレーション
ミストシャワーの飛散シミュレーション[ご参考]「TOTO公式note」にて、本受賞技術を含むTOTO独自のシミュレーション技術を紹介しています
第1話 スパコン「富岳」と“トイレ”の意外な関係 https://note.com/toto_ltd/n/n91253b7b26f8
第2話 スパコン「富岳」と“お風呂”の意外な関係 https://note.com/toto_ltd/n/n7e7efebf8899


今回「優秀成果賞」を受賞したTOTOの研究は、ミストシャワーの開発に高精度流体シミュレーションを適用する目的で実施したものです。
① ミスト状微小液滴の飛散シミュレーション
これまでシミュレーションが困難であった、直径0.1mmレベルの微細なミスト水滴の生成から飛散までの一連の現象を、「富岳」の計算能力を活用することで詳細に再現しました。
ミストシャワー生成用のノズルから放出された水が薄い膜を形成し、それが分裂して500µm(0.5mm)未満の微小な水滴が生成される様子を、2.2億メッシュという高精細なモデルで明らかにしました。
ミスト生成シミュレーション
さらに、空気抵抗が水滴の挙動に与える影響を考慮した独自の計算手法を構築。これにより、ミスト水滴が空気抵抗を受けて減速しながら空間を飛散する様子を、TOTOとして初めてシミュレーションできるようになりました。本技術を用いることで、水滴の大きさの分布や、ノズルからの距離に応じた速度変化などが定量的に予測可能となります。

一般シャワー(左)、ミストシャワー(右)のシミュレーション結果

② シャワー液滴の洗浄力評価
ミストシャワーが持つ優れた洗浄力のメカニズムを解明するため、皮膚の凹凸を3D形状で再現し、その溝に模擬した汚れを配置した空気・水・汚れの三相シミュレーションを実施しました。
このシミュレーションで、一般的なシャワーの水滴(直径1500µm)とミストシャワーの水滴(直径300µm)による洗浄効果を比較。その結果、ミストの微細な水滴は、大きな水滴では届きにくい皮膚の溝の内部まで入り込み、汚れを効率的に掻き出すことが明らかになりました。また、ミストは水滴の衝突頻度が高いため、汚れを継続的に除去し、洗浄を促進することも確認されました。
汚れの95%を除去するのに要する時間を算出したところ、今回の計算条件においては一般シャワーが1.09秒であるのに対し、ミストシャワーは0.15秒と、約7.3倍速く洗浄できるという結果が得られました。

これらのシミュレーション技術の確立により、シャワーに限らず様々なミスト製品の快適性・衛生性・洗浄性能を事前評価することが可能となります。
ニュースリリース全文は、以下よりダウンロードしてご覧ください。
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