特集/座談会+ケーススタディ

21世紀のストック活用でもUR都市機構が新しい一歩を提示できるか

市川 そろそろまとめに入りたいと思いますが、木下さん、今回の実験についてどのような感想をおもちでしょうか。
木下 ひばりが丘団地は、できたときには当時の皇太子ご夫妻(天皇皇后両陛下)がご訪問されたり、当時女性が5人歩いていると3人は妊婦さんだったというような話もあったりで、本当に豊かになっていく日本社会の象徴のような場所だったのだと思います。そういう場所で、これから先の社会に大きな影響を与えるような実験をされたのはとても意義深いことですね。
 私は2005年から2年間、URに在籍しましたが、その頃にも、この団地のなかでスターハウスの改修を行ったりして、先進的な取り組みもされている。ただ、それも実験で終わっていて、なかなか次につながっていかないのが非常に残念な気がしています。今回の実験についても、これを実験に終わらせないで、ぜひ次につなげていただきたい。76万戸という数のストックを管理されているURだからこそできる、新しい社会に向けての次の一歩を実現していっていただきたいですね。
渡辺 要素技術として展開していくのは間もなくではないか、また、そうしなければならないと思っています。
市川 私は、建て替え前のこのタイプの住戸で暮らしはじめたとき、すごく合理的でよくできていることに驚きました。どんなスペースも無駄にしないという設計者の気迫というか執念のようなものを感じたんですね。つくった人たちには、おそらく建物だけではなく、これからの日本人の暮らしを設計するんだという自負もあったのではないでしょうか。時代は変わりましたが、民間のマンションなどに追いつくといった姿勢ではなく、ぜひもっと先の、これからの日本人の暮らし方をリードするような提案に、この実験を結びつけていただきたいと思います。
木下 もともとUR都市機構の前身の日本住宅公団が、日本の戦後の住まいづくりのリーダー的存在だったわけですからね。21世紀のストック活用の段階でも、新しい一歩を提示してもらえると、まわりへの波及効果も大きいだろうし、ぜひそのような効果あるものを提示してほしいと思います。


>> UR都市機構のストック事情
>> 「ひばりが丘団地ストック再生実証試験」の概要
>> 実験1/階段室型住棟にエレベータと共用外廊下を新設する
>> 実験2/階段室の解体撤去の工法と施工性を検証する
>> 実験3/梁成(せい)を縮小して居住空間の広がりを向上する
>> 実験4/スラブの改修で遮音性能を上げる
>> 実験5/最上階4住戸を減築する
>> A棟のおもな住戸計画
>> B棟のおもな住戸計画
>> C棟のおもな住戸計画

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