間仕切り障子越しのバスルーム

 さっそく、まずはホテル客室を見学した。今回撮影したのは19階の2室で、いわゆる標準タイプでキングベッドを備えた「デラックスキング」(45㎡)と、セミダブルベッド2台を備えた「プレミアコーナーツイン」(57㎡)のうち、窓に面した浴室のある角部屋。
 後者のゆとりやバスルームの眺めもさることながら、印象的だったのは標準タイプとは思えないほど充実した前者のプラン。ポイントは空間を巧みに仕切ったりつないだりできる間仕切りの障子にある。障子は窓ぎわのベッドルームと手前の水まわりのあいだに建て込んであり、ガラス張りの浴室やドレッシングコーナーの目隠しとして活用したり、反対側に引き寄せれば、入り口前のスペースを独立した玄関のように使うこともできる。入室時にはドアを開け、さらに障子を開けると、正面のワイドな開口部から光が降り注ぎ、眼前の国会議事堂が目に飛び込んでくるという寸法だ。
 バスルームも窓に面してはいないが、ベッドルーム越しに景色が眺められ、開放感は十分。外光が入ることを計算して、仕上げ材にあえて濃い色を選んだという若本さんの言葉どおり、黒いタイル張りの室内は決して暗くはなく、むしろ上質な印象を醸し出している。スリーインワン方式をやめてトイレは独立させる一方、浴室と洗面所とのあいだはガラスで仕切ったので、いっそう広がりが感じられる。
 設備面では、全室にレインシャワーを備えたのも見どころ。誤って水を浴びることがないよう、操作盤の配置にも気を配ったと西澤さんは言う。「われわれの仕事は空間ではなく、空気をつくることだとよくみなに話します。いくらすばらしい空間をつくっても、サービスが行き届かない点がひとつあるだけで、すべての空気はぶちこわしですから」

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