特集/インタビュー②

新しい言葉とともに、新しい平面を発見したい

―― 保坂さんの設計する家は、感性だけでなく関係性をつくる論理もあり、そのあいだでうまくいっているように思います。そのあたりは意識されていますか。
保坂 「内と外」というところで論理的な部分はあるでしょう。またそれぞれの敷地やプロジェクトで、新しい提案ができそうで「おもしろくなりそうだ」と高揚するときには論理とは別の感性が入ると思います。そうなるまでにはいろいろと試します。模型はまず、スタイロフォームで200分の1ほどのスケールの模型を50個くらい大まかにつくります。改善しながら「これはおもしろそう」というものを見つけていきます。
 もちろん、スケッチでも考えます。「本郷台キリスト教会チャーチスクール 保育園」(2010)では、一筆描きでぐるぐるとプランをつくりました。コーヒーをミルクと混ぜるように、屋内と屋外、建物と森をかき混ぜるプランは、スケッチをしながら思いついたものです。最初はフリーハンドの曲線で描いていたのですが、手の動きは直交グリッドに置き換えができそうでした。するとリアリティがありながら、この建物での原理は損なわれずに実現できると思ったのです。内と外をつなげる、または連結させることを考えていて、その前には、中庭をいくつかつくる案もありました。外と「溶け込んでいる」状態ではあったのですが、「新しい外」といえるものはできないかとやっているうちに、「かき混ぜる」という意味で、新しいプランが導き出されました。
―― そうしたコンセプトは言葉として出てくるのでしょうか。
保坂 キーワードはプロジェクトごとに発見していかないといけないと思っています。自分は、学生の頃から住宅をつくりはじめ、そのまま仕事として続けています。設計事務所で建築家の先生について、その手法を踏襲し、または反発しながら切りひらく方法もありますが、自分にはそうしたベースがないので、設計は自分で発見していくものから進めていくほかありません。
 少し図々しいかもしれませんが、新しい言葉とともに、新しい平面が発見できるといいなと思います。別の大きなプログラムになっても、「内と外」についてはまだやりようがあるので、この先も探っていきたいと考えています。
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