木を伐って使ってこそ山が息を吹き返す

 南斜面の木は南の柱に。木は、生えていた方角で使え、とは古くからいわれることだ。木の特性を熟知した先人たちの知恵である。それを少しマクロにみれば、「広島の家には広島の木を使う」意味がわかる。考えればあたりまえのこと。北海道の木を沖縄で育てるのは難しい。山根木材は、県産材にこだわる。
「環境問題がクローズアップされて、みなさん自然を守れ、木を植えろとおっしゃるが、山の木を伐って、使ってこそ山が育つんです。伐った木をきちんと使って、そのあいだにまた木を育てるという流れをうまく循環させることが、持続型社会の基礎だと思うのです」
 山根さんは、これを「活樹」と呼ぶ。木を伐る=山を滅ぼす、という発想ではなく「木を活かす」ことが大切。活かして使わないから循環がうまくいかず、山が停滞するのであって、たくさん使うことで流れができる。じつは集成材を使うのも、その一環。手入れの行き届かない木は、樹齢を重ねても建築材料に向かないものが多く出る。それをできるだけ無駄なく使うには、チップにして集成材にしたほうがロスが少ない。
「ここ、柱も天井もみんな木が見えているでしょう。こういうつくり方をすると、職人たちの誠実さが伝わるんですよ。そうやって一生懸命つくった家を、メンテナンスして、リフォームして、長く住んでいただきたい。私たちは、それらをセットでサポートできる会社でありたいと思っています」
 節があってもいい、という新しい価値観にも受け入れられるデザインを模索し、さまざまな提案が続く。だが活動の基本は変わらない。地元の木を使うこと、しっかりした構造体の家をつくること、メンテナンスやリフォームにもきちんと取り組むこと。
 環境問題も、住宅の長寿命化も追い風にして、山根木材の次の100年が始まった。

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