現代の 「木の目利き」に 求められるもの

「柱の価値が、ずいぶん変わってしまいましたね」と山根さんが目で追うのは、山根木材のモデルハウス「山ふくじゅ」で採用されている柱。檜の集成4寸角。
「昔は柱の美しさは木の美しさでした。節がないほうがいい、目は詰んでるほうがいい、というのがあたりまえ。山のほうでも、そういう木を育てるために時期を選んで枝を打ったりしたものです。ところが今は、むしろ節があったほうが木らしくていい、というお客さままでいます」
 昔からの木の美しさは、今でももちろんある。柾目の美しい板材が高価なのも変わらない。だが社会は、そこに価値を見出さなくなりつつある。「木材」を社名に冠する身としては、忸怩たる思いもあるだろう。しかしあえて伝統的な木の文化に固執せず、新しい流れ、新しい木の使い方、新しい住宅像を追い求める。その結果として、集成材も使うし、数年前からは金物工法も取り入れた。自分たちは、文化財を扱っているのではない、お客さまが日常を過ごす住宅をつくっている。使命感にも似た、そんな気概に満ちている。
「長期優良住宅など、これからは住宅の長寿命化が求められます。そのためには強い構造体がいる。集成材は強度にばらつきがないから性能を担保できます。金物を使うのも同じ理由です。住宅は、木の美しさを求めた世界から強度を求める世界へ移ってきています」
 現代の「木の目利き」には、板目の見方などより、ヤング係数や乾燥率の把握が求められる。上下階の柱の位置を揃える「MOKUキューブ工法」の発想も、構造体としての強さを求めた結果だ。「木」にこだわるのではなく、「木の家」に思いがある。

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