「小屋」を問うとき、日本人の頭の中には、ただちに鴨長明、大愚良寛、松浦武四郎の極小の住居があざやかに浮かぶにちがいない。その極小の空間を日本人は詩歌書画音楽宴会のための小宇宙と見ていた。あらためて「小屋」を検証する。現代の小屋の多くは一見、目的意識を単純明解にしているように見える。しかし、その多様性をあぶり出していくと、各々の小屋に込められた思いはバラエティに富み、みごとなまでに複雑をきわめている。様式、素材、技法、目的、ときには流通を意識した試みまで。小なるがゆえに、建築分野の外にあるものと位置づけられ、忘れられかねないだけに、その存在は強い興味を引く。個々の小屋の向かうところを検証し、過剰なまでの建築世界を味わう。
表紙=「光の壁 イタクラギャラリー」の室内
写真=藤塚光政