特集1/インタビュー

Part 3

吹抜け越しに交わす視線「相間の谷」2008

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―― 「相間の谷」についてうかがいます。
五十嵐 ここは、隣に鉄工所の作業所があったり、周囲がどういう状況に変化するかがわからない。そこから影響を受けない解き方をまず考えて、外周部から距離を取ったリビングダイニングをつくろうと思いました。やはり南北にバッファーをとって、5.6mの天井高を確保しました。
―― こうしたプランは都市型住宅でもよく見ますが、スケールが全然違うんですね。リビングダイニングの平面が8.2m×5mですから。
五十嵐 スケールのメリットというのもその場所でのコンテクストだと思うので、解き方として最大限に使いたい。ここでは、バッファーゾーンの木造床を薄くして、15cmくらいの厚さでかなりのスパンを飛ばしています。光をバッファーゾーンの窓から入れて床や天井に反射させ、リビングダイニングとのあいだの開口から取り入れる。この床は、内部の庇みたいな感じになっているんです。そこにカーテンをつけたのは、光をさらに拡散させるということと、熱環境的にバッファーの負荷が大きいので空気をいったん遮断するという目的がありました。カーテンは壁厚の中に納まっています。
―― 南北のバッファーゾーンは半層くらいレベルがずれていますね。視線が自由に動きまわれるという感じがします。
五十嵐 そうですね。南北の関係は、自分の家の窓から、ひとの家の窓や隣のファサードを見ているような効果が出ました。ただ、それは結果論に近いです。
 この大きな開口から、向こうで拡散された光をどう入れるかとか、熱をどうするかといった、物理的な与件をきちんと解こうとしています。レクチャーでもこういう話ばかりするんですが、そうすると学生さんが、私でもつくれちゃうと思いました、と(笑)。確かにそのとおりなのですが、こういう解き方は必然だと思っています。最初にコンセプトや形態があるというのには、僕は抵抗がある。建築をつくる理由が、建築家の必然性ではないところで決定されていくものにしたいという気持ちがあります。

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