一本の柱がそうであるように、一枚の壁もいろいろな働きをなす。たとえば次のように。
壁は、人の動きを遮り、視線を断つ。
壁は、こちら側とあちら側をへだてる。
壁がこのような働きをなすことに疑いをもつ人はいない。近代以降の建築において、壁は限りない存在の重さという桎梏(しっこく)から脱したにもかかわらず、依然としてこうした働きに重きが置かれてきた。だが一方で、壁は別の働きもする。
壁は、風や音を遮り、安全な場を提供する。
壁は、人を寄せ、人が安心して拠る場を生む。
そもそも壁とは、分断し、拒絶する存在よりも、このような親和性に富んだ存在としての働きが求められたのではないか。
「house I」は、こうした壁の親和性を強く想起させる住宅である。