一枚のコンクリートの壁。長さ2.7m、高さ3.06m、厚さ150mm。それがもう一枚の同形の壁と直角につながり、自立するL字型のユニットが構成される。L字はちょうど四畳半を内包する寸法で、巨大ではないが、かといって家具的でもない、適度な建築的スケールをもっている。
このL字型ユニットが10個、平面上にちりばめられる。まったくランダムというわけではない。ある規則に縛られている。だがそれは壁が遠く離散してしまわないようにするためのゆるい規則にすぎないので、一見、L字型ユニット相互になんらかの規則的な関係性を認めることは困難である。
散逸的。気まま。バラバラ。あっちこっち。
10個のユニットが群れる状態を形容するとすれば、こう言うしかない。
このうちの9個の外周をガラス壁面でつないでいく。外周の内側の部分に平らな屋根をかけ、2カ所に天窓をあける。「house I」が出来上がる。単純にして明快な構成。
内外同一の漆喰仕上げとするための素材の選択、さまざまに異なる角度の吸収が必要な窓枠まわりの工夫、壁面にスイッチ類を付けず家具に付ける配慮、すべての壁と方向を異にして細かなピッチで架け渡されたポプラ材LSLの梁、大きな陸屋根の塗膜防水材の選択や軒先の納まり。
すべての工夫は、L字型ユニットの純粋性を保持し、全体構成の単純性を強化するために行われている。その迷いのなさが潔い。