- ―― 技術的にもいくつか新しい発想がありますね。
- 三石 はい。水はけのよさでおなじみの「カラリ床」に、初めて〝やわらかい床"が生まれました。この新しい床の開発にはそうとうなパワーを費やしています。「ソフトカラリ床」といいますが、畳のようなやわらかさを目指しました。ショールームでお客さまに、実際の床を素足で踏んで感じていただきたいです。
- ―― バスルームの床をやわらかくしようという発想は、不思議な感性ですね。
- 三石 昔からこの要望はあったんです。お風呂で遊ぶ時間が長いとき、極端に言えば寝っ転がれる床だったらいいよね、とか。「膝をつくと痛い」という声もサンプリングされていました。聞いた話ですが、高齢の女性の方は風呂いすを使わない方が多いんだそうです。少し昔の関東の銭湯では女湯に風呂いすがないところが多かったそうです。そこで、直接座ることができるような床がないかなと。今までの硬くて冷たい床に、お風呂マットを敷いていた方も結構多かったんです。それだったらやわらかくて冷たくない床をつくったらいいということで。実際これは好評です。
- ―― 男性と女性では使い方が違うものなんですね。
- 三石 シャワー水栓にも新しいバリエーションを加えています。以前はユニバーサルデザインの視点で、水栓金具はすべて、風呂いすの前の台に洗面器を置いて、座ってちょうどいい高さにくるように設計されていました。
ところが若い世代はシャワー中心で、立って使うから洗面器を置く台はいらないという方が多くて、オーバーヘッドシャワーの品揃えがあってもいいということになりました。 - ―― オーバーヘッドの水栓金具に対する憧れは強いですよね。
- 三石 はい。この「シャワーバー」タイプはリゾートホテル気分を意識しました。ほかにも手すりとシャワーが一体型の「メタルライン水栓」。座ってシャワーを使える「ベンチカウンター」、タッチ式の水栓を取り入れた「フラットタッチ水栓」「スマートタッチ水栓」など、計5タイプを用意しました。
それぞれ水栓開発部門と一緒に開発した商品ですが、これはTOTOの強みでもあるんです。
- ―― それから床のヌメリを防ぐ「ヌメリま洗Ag+」が新開発ですね。これは「ヌメリマセン・エージープラス」と読むんだそうですね。
- 三石 はい。わかりやすいでしょう(笑)。
銀イオンを洗い場床面に散布することによって、ヌメリの発生を抑えます。最近、銀イオンの添加剤はいろいろ出ていますが、バクテリアが増殖するのを抑えるという効果が確認されています。これを水に溶かし込んで撒くことによって、床面や排水溝のまわりのヌメリの発生を抑えます。
- ―― 床面全体にうまく散布するのは難しいでしょう。
- 三石 スイッチを押すとノズルが30秒間クルクルまわって、スプリンクラーのように水を撒きます。うまく全面にかかりますよ。銀のプレートが電気分解されて、水が流れるときプレートから溶け込むようになっています。10年間プレートを交換しないで使えます。その日最後に入浴した人がスイッチを押すだけでいいため簡単です。





