中島さんの仕事ぶりにはセオリーへの強い執着、原理原則へのこだわりが感じられる。
材木選びにもそれは表れているけれど、たとえばマーケットは広域にしない。本社・ショールームのある相模大野(神奈川県相模原市)を中心に、神奈川県とその周辺にしぼる。車で2時間が原則。この時間で行ける距離なら緊急のアフターサービスでもすぐに駆けつけられる。近くで誰かしらが仕事をしているからだ。顧客への対応の厚さを大事にする。
もうひとつ、建築中の住宅、現場を多くの人に見せたいというポイントがある。それが可能なのは近いからだ。仕事を実物で見せ評価されることを期待する。深く地域に密着し、仕事を通して信頼感を獲得していく。チラシよりもマス広告よりも強い力をもちうると信じているから。
富士小山プレカット工場も1時間半の距離にある。施主に工場を見てもらいたいから。背割りを入れた檜の大黒柱も事前に見てもらいたいからこの距離にした。土地コストの安いほうが初期投資は少なくてすむ。わかっていながら、あえてコストの高い近距離にこだわった。
工場へ案内するときの距離も大事だという認識がある。工場へ1時間半、その帰りに1時間半。一緒にいる3時間が、顧客との親密感をつくりあげる。人の心のあり方をわかっている戦略だといってもいいだろう。