日光市温泉旅館の女将さん水まわり座談会

2011年に設立された「日光市女将の会」。市内の宿泊施設で活躍する女将66人が参加しています。
日光市全体を盛り上げようと国内外を奔走する女将の会の皆さんに、外国人観光客の動向や旅館の水まわりの配慮について伺いました。

左から:増田さん、根本さん、臼井さん、伴さん、八木澤さん

日光・鬼怒川は多くの人が日帰りしてしまう

――― 今、日本全体として外国人が10年前の倍以上に増えています。実感はありますか?

増田

オフシーズンに欧米系のお客さまで1フロアがいっぱいになったことがあります。ただ、東日本震災後はそれほどでもないのです。

臼井

うちの旅館もそうです。
鬼怒川は外国からのお客さまがあまり多くありません。日光に比べてもかなり少ないです。

根本

栃木県で「どれくらいの外国人が日光に宿泊していくか」を調査したことがありますが、「日光・鬼怒川は日帰りで、宿泊先はほとんどが東京」という結果がでました。だから少ないんです。

――― 外国の方が来られたときは、外国語で対応されるのですか?

いえ。英語、できないんですよ(笑)。ただ、日光市が作った外国人観光客用のマニュアルがあります。中国語と英語と韓国語で書かれていますので、それを参考にしながら、コミュニケーションを取っています。

根本

私どもは英語のできるスタッフをフロントに配置しています。あとは2ケ月に1回ほど、英語の勉強会もしています。観光地までの行き方やお料理についてなど、聞かれることは限られていますので、みんなで情報共有しているのです。

根本

今は外国人のお客さまだけでなく、国内のお客さまも含めてできるだけ多くの方に日光にお泊まりいただきたいと、イベントに参加してみんなでビラを配るなどのPR活動をしています。

あとは、泊まらないと体験できないようなイベントを地域ごとに開催しています。湯西川でいえば、日本夜景遺産に選ばれた夜ならではのイベント「かまくら祭」を企画しています。それでも終電で帰ってしまうお客さまもいますけれど(笑)。

増田

特に東京五輪に向けて、何とか外国の方にも泊まっていただけるようにしたいですね。

トイレがきれいだと観光地のグレードが上がる

――― おもてなしには設備も重要ですが、トイレに関して取り組んでいることはありますか。

臼井

トイレは本当に大切ですよね。以前、ある観光地に行ったら、トイレがものすごくきれいでした。「これは観光客が喜ぶだろう」と思いました。
トイレがきれいだと、それだけで観光地のグレードがぐっと上がると感じました。

根本

確かに。それに、和式トイレから洋式トイレにすると、トイレってすごくきれいになります。

八木澤

それはいえますね。
特に小さいお子さんは、和式を怖がったり使い方がわからないことがあります。
でも洋式だとそれがありません。私どもの宿も客室のトイレは全部洋式で、温水洗浄便座にしています。

臼井

子どもさんは、和式だと前と後ろを逆に使うこともありますね。

うちもほとんどが洋式ですが、和式が残っているところもあります。
でも、和式は掃除に行っても、使われた形跡がない(笑)。今後はもっと洋式化を進めたいですね。

増田

うちあたりは修学旅行の生徒さんが泊まられて、和式トイレを使ったことがない方もいます。客室だけでなく共同のトイレも、数年前に和式から洋式の暖房便座にしました。
お年寄りも「便座がヒヤッとするのはちょっと」とおっしゃいますし、ご予約のときに「お部屋にウォシュレットある?」と聞いてくる方もいます。
外国の高級ホテルでもヒヤッとすることは多いですよね。
やっぱり日本のトイレはすごいと思います。

増田

外国人はウォシュレットを喜ばれますよ。

日本に来て、トイレのすごさがわかるんです。

八木澤

ただ、外国の方で洋式トイレの後ろにあるレバーの大と小の表記がわからない人が多くいるようです。
トイレにも英文表記が必要ですね。

お客様にとって平等になるようトイレもリニューアルしたい

――― トイレを改修するのはだいたい何年ごとでしょうか。

増田

年数でいえば20年くらい。でも年数より、壊れたものから順番に替えていく感じです。

根本

使えるのにわざわざ替えることはしません。
畳やカーペットを替えたり、いろんなところにお金がかかりますから。

臼井

お部屋をリニューアルするときに、できるだけフロアごとにやります。団体さんが入って「同じ料金なのに向こうの部屋の方がトイレがきれい」ということになると、お客さまはあまり気分がよくありませんからね。

限られたトイレのスペースで少しでも快適に過ごしてほしい

――― どういう基準でトイレを選ぶのですか。

増田

やっぱり最終的には金額でしょうか。

八木澤

あとはデザインとか、使い勝手。節水も気になりますから、新しい所には音姫(トイレ用擬音装置)をつけています。

根本

節水は大事。浴室のシャワーも少しずつ節水シャワーに替えています。ちりも積もれば山となりますから。

トイレのメンテナンスのしやすさとか。

根本

そうそう。掃除がしやすいことも大切ですよね。大きなねじが付いていたり、形状が複雑だと掃除が大変。あとは、日本の和風旅館のトイレスペースはなかなか変えられません。
タンクレスでコンパクトなトイレ(ネオレストAHタイプ)だと、限られたスペースが有効活用できていいですね。

臼井

トイレも少しでも快適にして、お客様にくつろいでいただけるように、整えておきたいですね。

座談会に参加した「日光市女将の会」の皆さん

  • 伴弘美さん 湯西川館本館(湯西川温泉)
  • 増田秀美さん ホテル高照(日光温泉)
  • 八木澤美和さん あさやホテル(鬼怒川温泉)
  • 臼井静枝さん 花の宿松や(鬼怒川温泉)
  • 根本方子さん 日光千姫物語(日光温泉)

情報誌「おもてなしトイレ通信」のお取り寄せ

おもてなしトイレ通信

おもてなしトイレづくりのトップランナーのインタビュー・事例を掲載した情報誌は、COM-ET(コメット)から無料でお取り寄せいただけます。

  • Vol.1 飲食店特集
  • Vol.2 おもてなしトイレ特集
  • 特別号 おもてなしトイレ特集(取り組み事例紹介)
  • Vol.3 宿泊施設特集