特集/インタビュー⑤

「KCH」自由な断面という手法

―― より普遍的な建築の原理ということでは、何を考えていますか。
河内 最近は「自由な断面」ということに興味があります。ル・コルビュジエの掲げた「近代建築の5原則」では、「自由な平面」「自由な立面」がありました。ただ、断面とは言っていないのですね。なぜかというと、自由な断面を突き詰めていくと、平面は自由度が少なくなっていくからです。でも、床の位置を固定せずに考えて断面を自由にしていくことで、立体的な関係性がもっと豊かになるのではないかと考えています。今、そのテーマで住宅をいくつか設計しています。在来工法がもつとされるモジュールや大きさからも離れることで、さまざまな高さの床があって空間が混ざるような家をつくりたいと考えています。
 自由な断面という手法に気づいたのは、この自宅兼事務所をつくる途中でのことでした。中古住宅を購入してリノベーションしたのですが、解体から自分たちが入り、つくりながら計画していきました。不動産情報では「木造2階建て」として売りに出されていたのですが、実際には屋上のテラスと地下の倉庫がありました。さらに、道路から敷地の奥に向かって地盤が下がっていて、高基礎になっているのではないかと予想しました。実際に高基礎だったので、1階の床下を掘って天井高を大きくとることができました。また、もともとあった1、2階をつなぐ階段はふさいで下の仕事場と上の住宅とを分けようと工事を始めましたが、階段を取り除いてできた孔を見ていると残したほうがよいと感じ、ガラスをはめました。打ち合わせスペースとなった半地下の4mの天井高は気持ちがいいものですし、小さな子どもが上から仕事場をのぞき込むのもおもしろいものです。木造2階建てとして定まっている形式であっても、上下の空間を考えるときに可能性がたくさんあることに気づいたのです。
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