>> 「house O」の詳細情報(PDF) を見る
- ―― 「house O」は同様な手法ですが、ここまでバリエーションができるのかと思いました。
- 五十嵐 「原野の回廊」を雑誌で見た方が、ああいう形がいいということで依頼をされました。土地も450坪あったんですが、最初にもらった部屋の希望面積を足していくと70坪くらいになってしまい、予算的に無理だろうと。そこで、こちらが勝手にボリュームをつくっていきました。
まず全体を四角いボリュームに収めると、当然ですが、部屋ごとの日当たりが不平等になります。東向きの部屋は、午前中しか直接の日が入らない。それを部屋単位で切り離すと、4面に当たりますよね。ただ、箱と箱を結ぶのに、通路のような箱がもうひとつ必要になるし、平行にずらす限りは、方位に対してあまりメリットがありません。ならば、土地は広いのだから、わがままに箱をつないでいったらどうなるだろうかというスタディをしました。まず道路側には、玄関や収納といったバッファー的な箱を配置する。そうやって機能ごとに箱を置いていき、最終的には、中心にリビングがあって、そこからフィンガー状に5方向へ分かれていく案になりました。そうすると、廊下みたいな無駄なものが省けて、4面の採光が得られるので、光の状態もずいぶん変わってきます。
ここでは、面での光の動きが重要だと考えていました。壁がいろんな角度で振れていますから、日がまわるとレフ板のように光を反射していって、いろんなバリエーションのある光の状態ができる。壁と天井は真っ白なんですが、そうした光によってかなり濃淡がついて見えてきます。
- ―― これは迷路性がありますよね。
- 五十嵐 ええ、でもじつは非常にシンプルな動線で、リビングが中心なのでどこへ行くにも近いんです。四角の中に納めるよりずっと合理的なプランだと思います。
また同時に、「原野の回廊」では平行にずらしていったので、見えない場所ができるといっても限度があります。それがこのように角度を振ってずらすと、見えない面積がずっと増えて、そういう場所を多くつくってあげようという意図がありました。実際、直接見えていなくても、気配や光を感じつつ、意識のなかでつながっているという状態がとてもおもしろかった。人間というのは、見えないことで予測をするんだなあと。
- ―― すごくシンボリックな空間がたくさんあるような気がしますね。
- 五十嵐 ここは天井を高くしたくて、全部のボリュームを10mからスタディしはじめたんです。ただここもツーバイフォーの工法なので、ハイスタッドという一本ものの材料が最大で6mなんですね。また座屈を含めた構造的な理由から、最終的には中央のリビングが一番高い6mになりました。ほかはそれより徐々に下がっていくという構成です。
>> 「house O」の詳細情報(PDF) を見る