
熊沢さんのインテリアデザインはある意味で写真に写りにくいところがある。
スタイルの場合、鏡のフレームにディテールの特徴が出ている。大きなガラスの中央一部を銀化させた鏡、そのすぐ外側は鏡面仕上げのステンレス、ガラスはその外にまで延長するけれど透明で存在感は薄くなっていく。表裏を合わせたところも鏡面仕上げのステンレスが続き、頭頂部近くに光を反射させる透明なアクリルの棒が添えられている。天井からはステンレスを編んだ紐が鏡を支えるかのような表情を見せて下りてくる。素材の一つひとつが明確に透明性を感じさせる。「透明化」への目的意識は素材の選び方にも明確なのだ。全体の透明感は人を際だたせ、空間を広くする。
これはインテリアがことさらに気を配る時代感覚というものだろう。建築における「明るさ、軽さ、透明性」と軌を一にする。
熊沢さんは「インテリアには多くの素材は使えない」と言う。ここには目的意識に沿った素材のみが明解に選ばれ、それによって表現がくずれることのないように配慮されている。
ウィスタリアフィールド2階の低いパーティションをデザイン的な視点で見ると、いわゆるどぶ付けの鉄板はぎらつきを抑えられている。鉄板を留めるのは微細なビス。大まかなつくりのなかに微粒子的なディテールが納められている。線を消したディテールのなかに極端に細密なデザインが込められている。
インテリアらしいディテールともいえるけれど、細密なディテールが潜められているが故の空間の緊張感がここにあるといえないだろうか。
もうひとつ、徹底した見せない収納。たとえばヘアカタログ雑誌と掃除道具の収納にも見ることができる。壁に取り付けられた薄いケース。ケース全体が扉になっている。扉の厚みで収納を取り、床面でゴミを吸収する。
工芸的な発想ともいえるだろうけれど、見事というほかはない。
店舗設計とはいえ、レストランのしつらえとも異なる特異な発想の世界があることだけは確かかもしれない。





