では、なぜ美容業界はこんなに伸びたのか。
　その理由として、美容人口の低年齢化による客層の裾野の広がり、ヘアカラー客の増加などが挙げられるが、さらにはそれらチェーン展開による店舗づくりが新たな店舗の増加をうながした。
　その現象をもう少しくわしく見てみると、社会的現象にもなった「カリスマ美容師」の出現からこの美容業界の成長が始まっている。初代カリスマ美容師といわれた綾小路竹千代さんが経営する東京原宿の美容室「アクア」はつねに予約でいっぱいの状態。さらに、芸能人を担当しているカリスマ美容師に私もカットしてもらいたいなど「美容師ブーム」を引き起こし、「シザーズリーグ」というテレビ番組まで出現した。これによって社会の美容師を見る目も変わり、社会的地位が向上した。人材育成や教育の面でも、この頃理美容専門学校が法改正（95年）のもと2年制（2000年から実施）となり、入学資格も中学卒業から原則として高等学校卒業へと変わった。また、美容師の免許も都道府県知事免許から厚生労働大臣免許となり、美容師ブームと成長著しい市場性により美容学校への入学希望者も増大した。バブル期には3K職種に近い業種であったが、この時代は高校生があこがれる職業の筆頭にもなった。