特集2/インタビュー

倉俣さんの時代を語って

―― インテリアデザインでいえば、倉俣史朗さんの時代はご存じですよね。作家性の強いインテリアへの興味はありますか。
八木岡 シマにいた頃、ちょうどバブル期だったので、インテリアデザイナーともずいぶん組みました。みなさん形に対する執着みたいなものがすごくありましたね。毎年2店舗ずつぐらいリニューアルして、そのたびに当時の有名なデザイナーたちに頼んでいました。
―― その後、デザイナーと決別した理由は何かありますか。
八木岡 美容の仕事は作業空間だということがあります。それを追求していくと結果的には自分が一番プロだということです(笑)。私たちの仕事はある意味、レストランでいう厨房です。オープンキッチンに近いんですが、僕たちのはオープンキッチンの中でお客さんに食べてもらうみたいなところですかね。
 時代時代で多少考え方の変化はあると思いますが、20年前、僕が自分でやりはじめた時期には、装飾や空間演出と、作業のしやすい空間とは違うというところに位置していました。
―― その頃は装飾性をどう感じていましたか。
八木岡 空間デザインに対しての依存度が高すぎたのだと思います。一番最初につくったときは、天井にほとんどの予算を使われて(笑)、肝心の自分たちが作業する床がPタイルになってしまいました。そのへんは書きますか?
―― ええ、書かせてください。おもしろいです(笑)。
八木岡 美容室はひとつの癒される空間でありたいでしょう。僕はお客さんの心地よさを第一にした装飾という思いがあるんです。同じ装飾性でも、デザイナーの場合は、ただ造形として考えているような……。
―― オーナーがパーソナルに改装したものも見かけますね。
八木岡 小さな店ほど個性は出しやすいですね。本人の好みを反映して、その好みを理解するお客さんが来るのでトレンドも関係ない場合がある。 とはいえ変化のなかで演出していくことは必要ですね。どんなビジネススタイルをとるのか、どんな作業空間をつくりたいのか、どうすればお客さんに居心地よくいてもらえるのか……。
―― 今の話をうかがっていると、店の規模というかサイズはそうとう影響しますね。
八木岡 影響すると思います。ここ(DaB表参道店)は40人のスタッフがいますが、日本の美容室は平均すれば1店舗当たりで働いている人の数はまだふたりに達していない状況ですから。
―― 美容室とひと口に言ってもその規模にはすごく違いがあるということですね。
八木岡 その割に値段が変わらないのがおもしろいところなんです。ニューヨークではカットで数百ドルとる人たちもいます。ただそれはヘアデザインの価値ではなくて本人のバリューで決めている。どんなヘアデザインをやるかというより、いくらでカットするかというのが、美容師を語るプロの常識みたいなところがあるんです。
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