特集1/エッセイ

 しかし、土木を目指す女子学生は、今でもそれほど多くない。あいかわらず、男の牙城とでもいうべき領域に、そこはなっている。男女共同参画がさけばれる、この21世紀初頭でも。
  建築家の仕事は、女の化粧とかわらない。そう言いきった土木学者は、ある本質を見ぬいていたような気もする。言いまわしには問題もあろうが、そこに一抹の真理がないとは思わない。
  さて、美容室と散髪屋である。今、時代の風は、あきらかに美容室のほうへ向かっている。じっさい、都市部では、美容室の数が、ここしばらくおどろくべき数で、増えてきた。しかし、散髪屋は、減少傾向にある。
  店がまえや、自分の名声にはこだわらない。だまって、仕事をこなしていく。そんな理髪師の時代は、次第におわりをむかえ出している。
  逆に、はったりめいた美容師のほうが、脚光をあびだした。店のつくりでも人目をひこうとするあきないのほうが、時代のながれにのっている。フェミニンな建築家たちの時代なのだ、現代は。そして、道路やダムをはじめとする土木工事は、やや白い目でながめられ出している。
  この頃は、散髪屋でなく美容室へおもむく男も、増えてきた。それも、若い男だけではない。いい年をした、分別のありそうなおっさんたちも、こじゃれた美容室をえらび出している。
  まあ、おっさんをあたたかくむかえる美容室は、それほど空間演出でがんばるまい。だが、由緒正しいおっさん的な、マッチョな価値観は、ほろび出している。そんな趨勢を、私は美容室の隆盛と、散髪屋の低迷にみるのだが、どうだろう。

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