おかげ横丁
1993年、伊勢神宮内宮の鳥居前に江戸時代の街道の賑わいを取り戻し、地域の活性化を目的に開業。全国から訪れる参拝者に、伊勢の風土を楽しんでもらう場所として親しまれている。施設内は江戸から明治にかけての伝統的な町並みを移築などで再現。門は設けられておらず、入場料は無料。誰でも自由に出入りすることができ、気ままにまち歩きを楽しむことができる。伊勢神宮内宮の入り口である宇治橋からのびるのが、神宮の歴史とともに発展してきたおはらい町。長きにわたり参拝客で賑わってきましたが、昭和60年代(1985年ごろ)の往来者は年間約20万人と落ち込んでいました。
地域活性化に積極的に寄与することを目的としたおかげ横丁は、おはらい町の一角にあります。運営する株式会社伊勢福は町並み保全に取り組み、地域の景観保存活動にも参画、おかげ横丁を1993年に開業しました。現在、茶屋と料理店が18軒、食べ物や工芸品などのお土産を扱う店が29軒、その他に見たり体験ができる施設などもあります。
おかげ横丁誕生の翌年には、おかげ横丁への来丁者は200万人を超え、2013年の式年遷宮の年には約650万人が足を運びました。おかげ横丁が地域への訪問者増加に大きく貢献したのは間違いありません。
「伊勢路の雰囲気を存分に味わっていただけるよう、お客様の過ごしやすい環境づくりを大切にしています」と話すのは株式会社伊勢福の広報、大谷和佳子さん。
その中でも、トイレはお客様に気持ちよく使っていただけることを重要視していると庶務・システム係の岡野利道さんは話します。
「おかげ横丁で食事をしたり、買い物をして楽しく過ごされたのに、もしトイレが残念な状態であったら、お客様はがっかりするでしょう」
そのためには、まずは清潔が第一です。おかげ横丁には5か所のトイレがあり、清掃担当者が、営業時間中、常に巡回して清掃と点検を行っているため、いつも清潔が保たれており、マイナス評価は聞いたことがなかったそうです。
10年前にも和式から洋式への改修を行いましたが、社内からトイレは清潔ではあるけれど、なんとなく薄暗くて印象が良くないという声が挙がりました。
「掃除は行き届いているはずなのにと思い、改めて仔細に確認したところ、確かに照明が少し暗いことは問題だと思いました。また、トイレやその周辺で経年劣化が目立っていました」と岡野さん。
そして、2023年に開丁30周年を迎えることもあり、大きな改修プロジェクトが動き出したのです。
まず、すべてのトイレの照明の照度をアップすることを決定。そして、かねてから改善が必要だと考えていた、女性トイレで発生しやすい行列を回避するため、女性トイレを増設しようと考えました。改修内容を検討するうち、当時、施設内のトイレはすべて男性用と女性用を併設していましたが、男性と女性が同じ場所に並ばずにすむほうがよいという意見が挙がりました。
検討の結果、男女を分けることを決定。5か所の男女の併設トイレのうち、2つを女性用に、1つを男性用に変更。家族連れの使い勝手を考慮し、2か所は併設のままとしました。利用者が迷わないよう、トイレのサインを大きく掲げ、どこにいけばどのトイレがあるか、他のトイレの案内掲示も設置しています。
加えて、車いすで利用できるトイレを総合案内所近くに移し、場所を尋ねられたときに「こちらです」と案内できるように配慮しています。
「女性トイレは同スペース内でブースを1つ増設するため、省スペースで設置できるコンパクト便器※を選定しました」
また、いつでも清潔で使いやすいトイレを維持するために細やかなメンテナンスは欠かせません。小便器は清掃担当者が巡回していないときも常に清潔を保つことができるよう、すべて自動洗浄型に入れ替えました。また、抗菌効果で臭いの原因となる菌を抑制するハイドロセラフロアも導入。多くの人が使うパブリック空間をより快適に保っています。なにかあればすぐに最寄りのTOTOメンテナンスが対応してくれるので、安心できるとも話してくれました。
また、手洗いスペースは、おかげ横丁らしさを演出するため、5か所のトイレごとに近くの店舗などに合わせてバラエティ豊かな意匠で演出しています。
スペースさえあればさらに増設したいと岡野さんは話します。
「まだ女性トイレに行列ができることがありますし、第一、きれいなトイレがたくさんあることは集客力アップにつながり、施設内の店舗にも好影響だと考えます」
2033年に伊勢神宮の式年遷宮を控え、多くの観光客の増加が見込まれます。もちろんおかげ横丁への来丁者も。
「伊勢神宮あってのおかげ横丁です。多くのご参拝の方に楽しんでいただける場所でありたいと思っています。これからも使い勝手がよく居心地の良いトイレで、お客様をお迎えしたいと思います」
名 称 | おかげ横丁屋外トイレ |
所 在 地 | 三重県伊勢市宇治中之切町52 |
施 主 | 株式会社赤福 |
設 計 | なかむら建設株式会社 |
施 工 | なかむら建設株式会社 |
構 造 | 木造 |
延床面積 | 100.88m2 |
竣工(改修)年月 | 2023年6月 |
パブリックコンパクト便器・フラッシュタンク式 CFS498M | ウォシュレットPS2A TCF5534A |
床置自動洗浄小便器 UFS910 | ハイドロセラ フロアPUS AB662S |
台付自動水栓 TLE33001J | 水石けん入れ TLK05204J |
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