それにしてもどうしてこんな例のない視点をもつに至ったのか。壇上では、水泳部出身と指摘されて盛り上がったが、キリスト教との関係もあるかもしれない。世界の教会についてたずねると、サーリネンの名作「MITチャペル」(1956)の光の注ぐ井戸状祭壇について、「こざかしい演出で、ホストクラブのエントランス」と酷評し、一方、ル・コルビュジエの「ロンシャン礼拝堂」(55)については、有名なステンドグラスの大きなほうより、見えない窓から光の降ってくる狭いチャペルのほうがいいと評した。“井戸の光”にはうるさいのだ。
 いつかその結晶のような空間がつくられたとき、ふつうの人でも西沢大良の建築を理解できるにちがいない。井戸の光は、人間の心の空間につながる性格をもっているのだから。

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