西沢作品についてウロコがいっぱい落ちたのは、宇都宮のプロジェクト完成後のシンポジウムの壇上でだった。私だけでなく伊東さんはじめ藤本壮介などプロジェクト関係者一同はむろん、超満員の聴衆からも初秋の落葉のように群れて落ちたのだから、ひとつの客観的出来事といっていいだろう。
で、一路、初秋の〈諏訪のハウス〉へ。諏訪は私のなつかしの故郷。
まず外観から。やはりわかりにくい。寄せ棟の家形をとってはいるが、左右からの寄せの角度がふつうの寄せ棟よりずっと急で、玄関アプローチから眺めると、屋根のような壁のような、どっちつかず。理由を聞くと、「町屋でもないのに切妻はいやだ。寄せ棟とはっきりわかるのもいや。でも遠くからひと目で家とわかるように家形にはした」。この答えで、ねらいどころのわかる読者がどれだけいるか。外観をつくる原理をつかみかねている、としか思えまい。
そして中へ。中こそ今日の私のねらいどころ。
まず主室(応接室、前室)。目が吸い寄せられたのは、天井のディテールだった。山小屋風の別荘なんだから、ふつうするように、木の梁を架けて木の根太天井とし、そのディテールと部材プロポーションを練れば十分なのに、木材に鉄材を加えて混構造としたうえで、ディテールを練り上げている。たとえば、H形鋼を半割したカットT鋼を2枚合わせて梁とし、屋根からの鉄バーで吊り、そこに木の根太を引っかけ、合板の床を張る。
確かに薄くなり、引き締まって見えるが、山小屋風別荘の天井面をここまでやるか。
ほかも同じくらい材と工夫を凝らしていれば納得するが、床も壁もただのラワンのベニヤ板張り。それも一番目立つはずの壁なんか、ベニヤパネルを縦に並べただけのデザイン。せめて壁くらいシナベニヤにできなかったのか。