特集3/ケーススタディ

スケール感の宙吊り

 「カタガラスの家」は密集地に潜むように立っている。歩行者の視点からは全景を眺めることはできない。だがシンプルな立体であることはわかる。
 外壁面はペアの型板ガラスのカーテンウォール、その内側に中空ポリカーボネイト板。半透明のその表情はやわらか。室内の像はぼやけ、にじんで広がる。型板ガラスのサッシ割付は内部構成と関係づけられていない。透明ガラスの窓の位置も同様に見える。スケールを把握する手がかりが失われる。スケール感が宙吊りにされるともいえる。
 ピロティの高さは低く抑えられ、ここに面してふたつの引き戸がある。
 手前の戸から入ると、意想外の大きな空間がいきなり出現する。天井高は4.2m。階段を上ったところに同じく天井の高い空間。これらは事務所として使われている。外観からは想像しがたい、壮大と形容しても過言でない空間だ。
 次に、奥の引き戸を入る。ここが住居部分の入り口。といっても幅80cmの階段室の最下部に入り込んだにすぎない。真っ白く塗装された内部は上方からの自然光がまわり込み、明るい。確かに狭いが、息苦しさとは無縁。ミコノスの路地に迷い込んだような心地よい外部感覚。

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