特集2/ケーススタディ

イメージのなかのプラス空間

 この家、まず作品名になっているとおり、保坂さんの言う「屋内の家」と「屋外の家」という概念のうえに成り立っている。
 以前の彼の作品群で語られた「家の内」「家の外」という空間領域の問題意識の延長線上にあるのかもしれない。けれど、明確な別空間の設定は、さらなる複雑系イメージの空間を押し出しているような気がする。
 離れ、あるいは茶室なら、なるほどですむ別棟。それをほとんど無目的とも見える場所を設定することで空間に変化を生み、刺激的なものとして生かしている。
 言い方を換えるなら、この家は頭のなかに記憶する居住空間を、連続性を断って配置することでさらなる空間の意識を拡大させている。イマジネーションをそそる別棟。機能としてならワンルームで成立するはずの空間に、別の異空間を加えることで脳を刺激すると言っていいだろうか。それが2棟あり、同じ床仕上げの間庭でつながって「屋外の家」となっている。
 奇妙な発想に見える。図面を見ると。
 けれどこの家の内部に入ってみると素直に「もうひとつの、あるいはもうふたつの空間がある家」と受け取れる。意外な自然さ。
 母屋のダイニングテーブルに座って前後左右を眺める。なんの違和感もない。庭先に離れがある。空間の連続性があるだけ。素直にその空間の位置関係が頭のなかに収まる。だから生まれる広さの感覚、狭さを忘れさせてくれるあちらの部屋、あちらの庭。高度な心理学としての空間創造がここにあるように感じる。重層する空間は、重層する壁よりも今ひとつ力を見せるという確信か。

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