新しいステージに向けた大胆な舵取り

 2009年7月オープンのフクヤ建設の新展示場は、建築関係者のみならず多くの高知市民を驚かせた。展示場の建物とは思えない大胆なフォルム。カフェ、ライブラリー、体験宿泊など、およそ従来の住宅展示場のイメージとかけ離れている。2棟のうちの1棟(SUU)は、設計を建築家・谷尻誠氏、構造を名和研二氏が担当。ライブラリーの本の選定はブックディレクターの幅允孝氏による。
 共同住宅展示場への出展から単独開設へ、さらに展示場のコンセプト自体を「商品を見せる」から「気持ちよさを感じて、家について考える」へ大幅に方向転換。
「昔は、たとえば力のある営業マンがグイグイみんなを引っ張るような感じでしたが、今は、設計も営業も現場もみんなが集まって一緒に考えるようなスタイルです。ここも若い人たちが考えて、みんながやりたい、というものを形にしたんです」
 そういえばフクヤ建設も会員になっているFPグループ、つまりFP工法(*)の家について、フクヤ建設のホームページではほとんど紹介されていない。標準的に使っているムクの木や漆喰などの自然素材についても同様だ。そこに、仕様や性能をウリにして他社との差異化を図るのではなく、その先を大切にしたい、という会社の姿勢がうかがわれる。
 とことん誠実に建て主と付き合うこと。つくり手の考える「いい家」ではなく、住まい手が考える「いい家」を追求すること。創業以来の信念をそのままに、若い世代にバトンを手渡すべく、社長自らが思いきって次のステージへと舵を切った。

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