特集1/座談会

いい室内気候が家を長生きさせる

豊田 熱環境の問題を中心にお話しいただきましたが、環境について、長寿命とかサステイナブルの問題についてもうかがえますか。
野沢 僕は、ミース・ファン・デル・ローエ(*27)のいう「レス・イズ・モア」(より少ないことはより豊かなこと)と、Q(クオリティ/品質)とL(ロード/負荷)の関係はつながりそうだと思うんです。より高いQをいかに少ないLでつくるかが大切だということです。「ファクター4」(*28)と価値の置き方が同じですよね。だから室内気候の品質というのは、家を長く使ううえで、かなり重要なファクターだと思う。やはり、シングルガラスで、冬は窓のほうから冷たい風がずうっと流れてくるという状況だと、嫌になってしまうでしょう。そうならない環境をつくれば、気がつくと50年、80年住んでいたというふうになるかもしれない。だから結果として長く使える家というのは、温熱のことがふつうにコントロールされている家だろうと思うんです。
 それと、CO2の話でいえば、CO2を固定化できる唯一の建築材料が木材、という意味で、木造というのは非常に説明可能な建築物ですよね。それで、木造で何が一番おもしろいかというと、大工です。僕は、外国人のように日本の大工にびっくりしているところがあって(笑)。日本の大工がずうっと付き合ってきたスギやヒノキの家のなかに、彼らが確信している合理みたいなものがある。そう感じるのは、木造研究者の稲山正弘さん(*29)と一緒に設計していることもあります。彼と相談して、僕らが、こんなのはどうだろうというと、大工は非常におもしろがって反応します。僕らが出したテキストを見た途端に、全部自分の回路で理解するというか、翻案して、間違えることがない。自分でいうのも生意気ですが、大工を挑発するような設計をしなければいけないと思っています。これは基本的に架構の話ですけれどね。
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