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野沢 環境系の新しい研究領域というのは、実用とつながるところで評価ができたり、技術開発ともつながる。でも、計画の先生がなかなかいませんね。そういう人が建築家の相談相手になれば、断熱材をどういう厚さにするかとか、アトピー性皮膚炎の施主にどういう素材を使うかとか、いろんな新しいアイデアがもらえる。これからはそういう人材が輩出してきてほしい。
松村 今まで、そういうことに興味をもつ人というのは、まあ例外はいますけれど、建築に関心がない(笑)。建築好きの学生が環境を研究したらおもしろいですよね。おっしゃるように、工夫をしたら効果のよし悪しがはっきり出るという、非常にわかりやすい世界なので、環境に興味をもつ学生は徐々に増えている感じがします。でも、今はまだ少ないですね。
野沢 僕は大高事務所に入ったときから高間三郎さん(*24)と付き合っていて、彼は予言者のように、こうしたらいいとか、妙な技術(笑)を教えてくれました。彼との応答は理想に近い感じがしましたね。
松村 そう、高間さんしか思いつかないんですよ。構造エンジニアは、今、かなりいますけれどね。
野沢 アラップ(*25)のような組織のサービスが、日本にもあっていいですよね。
松村 ヨーロッパにはけっこうあるんです。たとえば、ダブルスキンのファサードをエンジニアリングしている事務所とか。それをやるには、気流をきちんとシミュレーションする能力をもっている必要がある。
野沢 ベルギーのファサード・エンジニアのグループにいるような人たちは、そこでの技術開発が彼らのノウハウなり商品なりになるから、次々に新しいことを思いつきます。また、この前ドイツに行ったら、バルコニーなどのヒートブリッジを切るために、ステンレスの棒でコンクリートを断熱しながらつなぐ部品だけをつくっている会社があった。それを発明した人が興した会社だそうです。目的をしぼった部材をつくるのと起業とがセットになっています。
太田 ミュンヘン工科大学のヘルツォーク(*26)の研究室も、博士論文ではモックアップをつくっていて、パーツを開発させて卒業という感じですね。