特集1/座談会

3人の自邸に見る設計の意識

太田 最近、小泉雅生さん(*19)曽我部昌史さん(*20)塚本由晴さん(*21)が、わりと相次いで自邸を建てられて、僕は3つとも見に行ってすごく印象に残りました。みんな共通するところがあるんです。まず、敷地が旗竿型だったり、隣が一時的な空き地なのだけれど、そこで採光したり(笑)。外部空間との関係が取りづらいなかで、インテリアを成立させなくてはならない……。窓があったとしても、塚本さんのところは隣の壁しか見えない。窓を開けられるところが限られている。
野沢 少し、しんどそうですね。
松村 窓はキーワードですね。千葉学さん(*22)が窓の本(『窓のある家』)を出したり。最近は、窓がどこについているかで、いいとか悪いとかいっていますね。小さい窓の脇に腰を掛けると、斜め上に空が見えるとか。
野沢 それはインテリアっぽいですね。
松村 すごくナイーブな空間性で、人がいて、窓があって、窓によってのみ外と関係をもつ感じでしょうか。
太田 そうですね。外部から拒絶されているようなところもあって、そのなかでどうやって窓を開けるかという論理を、環境から起こせないかと考えている感じがします。外界の力がないところで、なんとか内部環境を整理しようとする。それから、基本的に重力換気(温度差を利用した換気)を使っていて、輻射暖房をしています。共通した問題として、密集市街地での環境調整というテーマがあって、なかなか自然の力に頼れないなかで、アクティブな装置を併用する、というのは切実な問題設定だと思います。
野沢 フラーの「ダイマキシオン・ハウス」(29)(*23)のように、家自体が装置になっている、メカニズムとしての家というのがありますよね。そこに戻って、今日的にはそれにより温熱的環境を維持させたり、遅らせたりするツールがある。小泉さんの家ではPCM(Phase Change Material:潜熱蓄熱材/例「スミターマル」)を使っていますよね。彼が参加しているハウジング・フィジックス・デザイン研究会も、具体的にそういう室内気候クオリティにテーマを絞っているのはおもしろいですね。
松村 施主の意識が変わってきているんじゃないですか。昔だと熱環境へはいかずに、石油ストーブを置いておけばいいですから、というような話だったのが、変わってきた。たとえば、小泉さんたちの世代も、低炭素社会などを考えていたりするんですか。
太田 まだ表面化はしていないと思いますが、意識は高まっていると思いますよ。
野沢 やはり建築の醍醐味のなかに、今までにないものが達成される工夫のおもしろさ、技術的達成感のようなものは絶対あると、僕は思うな。構法とか環境技術とか、ものを考えて、そこに根拠のあるものが、実際にその根拠に近い成果をあげたおもしろさはある。輻射でどう暖房するかという工夫でも、まだやれることはたくさんありますよね。
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