- 野沢 空気集熱型のパッシブソーラーを考えはじめたとき、昔の技術で、自分たちのやっていることを補強してくれるものはないかと考えました。集熱した空気を床下に入れて、床版のコンクリートに熱を溜めて、輻射であたためるというときに。そうすると、吉村順三さんが温風床暖房をやったのは、オンドルがルーツだろうと思うんです。
吉村さんは中学生くらいの頃、朝鮮半島、ひょっとすると旧満州まで行っているかもしれない。すると、そこでオンドルやペチカを見ている。その前には、フランク・ロイド・ライト(*15)が、大きな穴を掘って重力暖房(*16)をやります。ライトは何度も日本に来ているわけで、すぐ先の朝鮮半島にもきっと行ったと思う。だから重力暖房もオンドルがヒントになっている可能性はありますよね。それで、温風ではなくお湯で、パイピングでやったのがアメリカの床暖房ではないかと妄想しているんですが(笑)。
松村 いや、あるかもしれません。アメリカは安い家でも床暖房を入れていますからね。戦後すぐに開発されたレヴィットタウン(*17)でも、床のコンクリートに電熱線のようなものを入れています。1947年に、床暖房付き、洗濯機付き、冷蔵庫付き、テレビも壁に埋め込まれている。すごい国だなあと。
野沢 やはり、さっきの話でいう、電気に対する過度の期待みたいなものがあったんでしょうね。アメリカの放蕩生活のようなものが、うらやましかったときはあります。
松村 ええ、最近までそうですからね。確かバックミンスター・フラー(*18)に「エネルギー・サーバント(召し使い)」という概念があって、アメリカはエネルギー・サーバントを、ひとり当たり8人雇っている。アフリカになると、ひとり当たり0.0何人しか雇っていない。これ、電力の消費量を人力で表すことなんですよ。
野沢 僕らが援用しているのは、「CO2サーバント」なんです。生物の呼吸として人間ひとりが排出するCO2の何倍を、化石燃料の消費の形で排出しているかというカウントです。それによると、アメリカ人はひとり当たりで50人分ぐらい。日本人が25人分ぐらい。地球上で平均すると10人分ぐらい。ひとりもCO2サーバントを雇用していない国もたくさんあって、機械に頼らないで人力でやっているところですね。一部先進国だけが、ものすごいボリュームのCO2サーバントによって快適さを維持していることになる。