特集1/座談会

自然エネルギーによる防寒・防暑

松村 ちょっと思い出したことをいいますと、戦前、『満州建築』と『台湾建築』と『朝鮮建築』という雑誌がありました。東大の図書館にけっこう揃っているんですが、中国東北部(旧満州)はすごく寒いし、台湾はすごく暑くて湿度も高い。だからこの前2者の雑誌の主要テーマは、毎号、防寒と防暑で、いろんな研究をしています。おそらく、日本国内は温暖地だから、ほとんど危機感がなくすごしていたんですね。
野沢 なるほど。でも今や、日本国内の夏と冬が大問題になりつつありますね。というのは、スタンダードをもっと下げろ、つまりエネルギーを使うのをやめるゼロエネルギー化へと要求のレベルが上がってくると、日本の冬は旧満州並みで、日本の夏は台湾並みだと思います。その両方の答えを出せといわれている。難しいけれど、もう今の日本の住宅は、トリプルガラスだとか、グラスウール100㎜を32kg/m3で詰めようという話になりつつある。それはきっと宿題で、どこまでやれるかやってみてもおもしろいなと思っているんです。
松村 でも非常に、難しいですよね。原理的には、夏冬で壁体内は逆のことが起こるわけだから。
野沢 逆転は、冷房をしなければ起きないですよね。日本でその難問を上手に解くには、「がまん」というフィルターがどれくらい入るかによります(笑)。人間はぜいたくをしはじめるときりがなくて、前には戻れない。それを豊かさというのかもしれないけれど(笑)。でも住宅の1年間のエネルギー使用をみると、日本は今のところ、冷房をほとんど頼りにしていませんね。暖房が30%ぐらいで、冷房は数パーセント……。
太田 だいたい、10分の1ぐらいですね。
野沢 だから、夏はまあ、地下室に入るとかして(笑)。冬はきちんとした箱をつくって、パッシブなエネルギーでいけるのではないかと最近は思います。
松村 しかし夏ですよ、やはり。確実に平均気温が上昇してくることと、地球人口の爆発的増加が熱帯ゾーンで起こることを考え合わせると、世界的テーマは夏ではないか。それから、じつは暑いところに先進国は少ない。だから、寒いところには技術蓄積があるけれど、暑いところには元となる技術ができていないんです。
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