自然界の光のゆらぎを照明に活かし、さらに深いリラックスを生む浴室へ

上質で心休まる穏やかな時間をすごすためのシステムバスルーム「シンラ」。住まいで過ごす時間が長くなってきたことから、入浴でさらにリフレッシュ・リラックスしていただけるように、2022年10月に新アイテムを追加しました。浴室内のコーディネートを充実させ、調光調色システムもバージョンアップ。開発に携わった村上香織さん、大谷寿実さんにそのプロセスと、新しくなった「シンラ」の魅力について語っていただきました。

※ 撮影時のみマスクを外しています

    「シンラ」はTOTOのシステムバスルームの中でもフラッグシップモデルとなる商品ですね。今回、なぜ新アイテムが追加されたのですか？

村上さん（以下、村上）　コロナ禍を契機に新しい生活様式が広がってきて、自宅で過ごす時間が長くなってきていますよね。その時間をより充実させるために、「お風呂でリラックス、リフレッシュしたい」というお客様からの声が増えてきています。そうした背景から現行の「シンラ」の心地よい空間を継承しながら、より満足感を高められるようにバージョンアップさせたい、ということが開発のきっかけになりました。

大谷さん（以下、大谷）　「シンラ」は「上質で心休まる穏やかな時間をすごす」ためのシステムバスルームとして好評を博してきた商品です。お風呂につかったり、体を洗ったり、というだけではなくて、バスタイムそのものをゆっくり楽しんでいただくことをコンセプトとしています。人間工学に基づいて身体を優しく包み込む「ファーストクラス浴槽」、幅広で大流量のお湯が肩にかかる「肩楽湯」、適度な刺激のジェットバスのような「腰楽湯」、2モードのオーバーヘッドシャワー、調光調色システムなどの機能も充実しています。

    新しく加わったアイテムとは？

大谷　今までの「シンラ」に、さらに落ち着いた空間を演出する「ブラックアイテム」として、天井やダウンライト、浴室換気暖房乾燥機「三乾王」、暖房換気扇や浴室オーディオの防水スピーカーにブラックカラーを追加しました。新しい壁柄も3色増やし、浴室空間のコーディネートの幅を広げました。

村上　機能面では、「調光調色システム」に新たに「瞑想ゆらぎモード」を搭載したほか、これまでの「瞑想モード」を進化させ、ゆったりとしたくつろぎを提供いたします。また、TOTOのクリーン技術「床ワイパー洗浄（きれい除菌水）」には、使用後に床を水で軽く流し、次に入浴する人への心配りができる機能「床スッキリ」を新たに追加しました。

    浴室のイメージが大きく変わりそうですね。

村上　新アイテムの開発にあたっては、機能、色柄ともに上質な時間や空間、非日常感をご提供することを目指しました。よりリラックス、リフレッシュしていただける商品に仕上がったと思います。

    大谷さんはデザイナーとしてどのようなことを担当しましたか？

大谷　今回は、「上質感」や「非日常感の演出」を求めて、ダークな色調の空間を好まれるお客様のために、天井や設備機器にもブラック部材の選択肢を用意して、浴室のコーディネートの完成度を高めました。それと、新しい壁パネルの柄として、モノトーンでメタル調の柄ストーリアブラック、ストーリアグレー2柄と天然石のカラカッタをモチーフにした柄のペトラアイボリーの計3種を追加しています。

    デザイン面で気を付けたことは？

大谷　色や柄、素材の質感のバランスをとることですね。特に新しく追加した壁柄については、空間で見たときの華やかさと近くに寄ったときの素材感をバランスよく表現するため、何度も試作を繰り返しました。ペトラアイボリーの壁柄は、自宅でもホテルライクなリッチな気分を感じられるような大理石柄にしました。幅広いお客様に支持していただけるナチュラルな空間を演出します。柄を引き立てながらも、シンラの照明下で大理石の結晶感や透明感を美しく感じていただけるよう、細かく細かく調整していきました。

    新壁柄では、ブラックも印象的ですね。

大谷　特別な非日常感を味わっていただくためにご用意しました。モノトーンのモダンな空間でも穏やかで上質な雰囲気を出すために、光の反射で見えてくる柄と、色の濃淡で浮かび上がる柄の2種類をかけ合わせて奥深さを出しました。またブラックは冷たい印象になることもあるので、少し赤みを入れて色調を調整しています。黒い空間でも単調になることなく、夜空の下で入浴しているような、そんな感覚を演出しました。

    村上さんは調光調色システムを担当されたのですね。

村上　大学で光環境工学を専攻していた経験が活きました。「シンラ」の照明には、1日の光のうつろいを参考にした6種類の「光の（位置の）高さ」、「明るさ」と「色」を気分によって切り替えられるシステムが搭載されています。照明はいずれも入浴時に光源が視界に入らないように設計されているので、間接照明によってまぶしさを感じることなく、心が落ち着きます。今回はさらに、「1/f ゆらぎ」を活用し、焚き火やキャンドルの炎をイメージしたモードを追加しました。

    それはどのようなものですか？

村上　「1/f ゆらぎ」というのは自然界にある、人が心地よいと感じる周波数のことで、波の音や小鳥のさえずり、木漏れ日などに含まれているものです。焚き火やキャンドルの炎は、見つめていると自然とリラックスしてきますよね。これを照明の光に取り入れました。

    どのような価値がありますか？

村上　私も実際に入浴してみたのですが、炎が揺らぐような柔らかい光に包まれた空間でお風呂時間に没入すると、慌ただしい日常から解放され、リラックスできます。これまで開発段階でリラックスの度合いを検証する際にはモニターの方の感想を参考にしていたのですが、主観的なものですので、どうしてもその日の気分によっても大きくぶれが生じてしまいます。そこで今回は心拍などの生体情報のデータをもとにストレス指標となる数値を測定して、リラックスの度合いを測るようにしました。客観性の高い検証を実施することで、従来よりも着実に、照明によるリフレッシュ・リラックスできる空間を演出することができました。

    大谷さんは今回、「シンラ」の新アイテムのデザインに関わってみて、いかがでしたか？

大谷　「シンラ」をご評価くださっているお客様は、物事の本質的な価値を大事にされている方が多いです。そのような審美眼を持つ、これからシンラをご検討されるお客様にも納得いただけるデザインに仕上げていくことは、常に意識していました。もともと私は2006年の入社以来、デザインのニーズやその背景を分析するデザインマーケティングや、完成した商品の魅力を伝える販促デザイン、また商品のコーディネート戦略、色・柄・素材のCMFデザインなどの業務にも携わってきました。こうした経験がすべて活かされた仕事だったと思います。

※CMF：商品などの表面に関わる3要素、COLOR（色）、MATERIAL（素材）、FINISHING（加工）の頭文字を組み合わせた言葉

    ご自身もお風呂好きだとか？

大谷　はい、お風呂が大好きなあまり、学生時代はスーパー銭湯でアルバイトしていたこともあるくらいです（笑）。今は家にいるときも家事、育児に追われるので、夜、ひとりで入るお風呂時間は、本当にかけがえのないひととき。「シンラ」のコンセプトには心から共感しています。

    村上さんは「シンラ」の新しい調光調色システムの手ごたえ、いかがですか？

村上　生体情報の数値化を取り入れることができたのは大きかったですね。今後は、シャワーの浴び心地や音楽によるリラックス度とか、入浴時の五感の快適さをもっと追求していけるのではないかなとワクワクしています。

大谷　浴槽にお湯を張ると照明の光が湯面に反射してとてもきれいなんです。せっかくいいものがつくれたので、多くのお客様に伝えていきたい。ぜひ実際に入浴してみていただきたいですね。

取材・文／渡辺 圭彦　　写真／後藤 徹雄　　動画／㈱ゼネラルアサヒ　　構成／介川 亜紀　　2022年11月29日掲載
※『快適はヒトの手から～開発ストーリー～』の記事内容は、掲載時点での情報です。

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