自然界の光のゆらぎを照明に活かし、さらに深いリラックスを生む浴室へ
上質で心休まる穏やかな時間をすごすためのシステムバスルーム「シンラ」。住まいで過ごす時間が長くなってきたことから、入浴でさらにリフレッシュ・リラックスしていただけるように、2022年10月に新アイテムを追加しました。浴室内のコーディネートを充実させ、調光調色システムもバージョンアップ。開発に携わった村上香織さん、大谷寿実さんにそのプロセスと、新しくなった「シンラ」の魅力について語っていただきました。
2022年11月29日

2026年3月6日

浴室のお掃除の負担を軽減する新機能「浴室クリアキープ(きれい除菌水)」が、2026年2月に発売のTOTOのシステムバスルーム「シンラ」「サザナ」などの主要シリーズに搭載されました。「きれい除菌水」を浴室内にいきわたらせることで、カビの発生を防ぎ、きれいな状態を維持しやすくする効果があります。浴室機器開発グループの林訓広さん、商品研究第一グループの佐藤秀祐さんへのインタビュー後編では、製品化にあたってのエピソードをうかがいました。

浴室開発第一部 浴室機器開発G
林 訓広 さん
給湯機のソフト開発の仕事を経て2004年に中途入社。浴室機器開発Gで浴室のマルチリモコン、つながる快適セットなど機能商品の開発に携わる。

商品研究部 商品研究第一G
佐藤 秀祐 さん
2019年に入社後、TOTO総合研究所に所属。商品研究第一Gにて、「きれい除菌水」に関する研究に携わる。
インタビュー前編では主に「きれい除菌水」を効果的に機能させるための方法を模索する段階のお話をお聞きしました。それをもとに、「浴室クリアキープ」という機能として実際にシステムバスに搭載するため、どのように開発を進めていきましたか?
林 前回も触れましたが、まずは社内にしつらえた実際の浴室空間で「きれい除菌水(水に含まれる塩化物イオンを電気分解して作られる除菌成分、次亜塩素酸を含む水)」の気化した除菌成分が浴室内にいきわたっていることを確認。次にさまざまなお客様の浴室の使用状況を想定し、浴室全体をきれいに保つためにどのような性能・仕様が必要かをリストアップして、データ(数値)化しました。その後、実証実験を繰り返し、数値を実現していったのです。
佐藤 私たち総合研究所では、一般の浴室の条件下で、製品に求められる性能・仕様を満たすデータを洗い出していくわけですが、その数値が実際の家庭で起こりうる最悪条件※まで想定できていないため、開発担当の林さんたちに最悪条件を数値化してもらい製品の実現に向けて「最悪条件の数値が厳しすぎる場合、この数値は現実的な使用シーンの想定において、過度な負荷設定になっていないか」議論を重ねることになります。
※最悪条件とは、きれい除菌水の気化を阻害するノイズの積み重ね
開発過程で大変だったことは?
林 家庭での浴室の使用状況を具体的に想定することですね。単身世帯の場合と2~3世代にわたるご家族の場合とでは、浴室の使い方は大きく異なりますし、ライフスタイルによっても浴室がどのくらい汚れて洗浄機能がどの程度必要になるかは違ってきます。
単身世帯だと1日に1回しか入浴しないかもしれない。小さいお子さんがいる家庭なら夕方早い時間に入浴するだろうし、中高生のお子さんがいれば部活や塾から夜遅くに帰宅して入浴するかもしれない。お嬢さんがいたら、朝にシャワーを浴びるかもしれない。
特に近年は入浴習慣が多様化しているので、あらためて、どのような方が浴室をどのように使うものなのか、他の部署とも連携を図り、状況を把握していきました。
ここをきちんと詰めて合意しないと、製品について当社で保証できる範囲も定まりません。お客様に安心して使っていただくためにも、他の部署とも協議しながら慎重に検討しました。

「浴室クリアキープ」の仕組みは?
林 まず水道水を床面に流して、カビや菌の栄養となる角質や皮脂を除去します。そして、「床ワイパー洗浄(きれい除菌水)」のノズルを利用して「きれい除菌水」を散布し、気化した除菌成分を浴室換気暖房乾燥機「三乾王※」の温風に乗せて浴室内に充満させるという仕組みです。(前編を参照ください)
※「暖房換気扇」もセレクト可能
開発段階で課題になったことは?
林 課題は「きれい除菌水」の使用する量を増やすこと。「きれい除菌水」を床に直接散布していますが、「浴室クリアキープ」では床を洗浄・除菌する性能は維持したまま、浴室全体へも除菌成分をいきわたらせる必要があります。そのため、使用する量を増やさなければなりません。ただし、除菌水の量を増やすと、現状の除菌水生成ユニットでは、要求仕様である「10年性能を担保すること」が未達になることがほぼ確実です。最終的に、量を約2倍弱とし、新たな除菌水生成ユニットの開発を行いました。


噴霧距離が短く液体の状態のものを床に、噴霧距離が長く気化したものを空間全体にいきわたらせることを示した図。(資料提供/TOTO)

気化した除菌成分を浴室内に拡散するためには、「三乾王(もしくは暖房換気扇)」の温風が不可欠。そこで、浴室内における温風の流れについても確認、検証していきました。
開発段階でのもうひとつの課題とは?
林 「きれい除菌水」を浴室内全体にいきわたらせるための、噴霧用ノズルの工夫です。これは既存の「床ワイパー洗浄」を活用します。現行のノズルは床面に撒いて効果を発揮します。「浴室クリアキープ」では床への効果を維持したまま、その他の部位への効果を発揮させるための形状を検討しました。
どのような形状にしたのですか?
林 まず現行のものよりもノズルの噴出口の口径を小さくしました。「きれい除菌水」の水滴の粒を小さくすることで、空気に触れる表面積の割合を増やし、気化しやすくしたのです。さらにノズルを現行よりも上向きにして、気化した成分が上昇しやすくもしました。
気化したミスト状の除菌成分は、軽く、飛散距離が伸びます。気化すると除菌成分の濃度は下がるのですが、密閉した浴室内に充満させることで、菌との接触時間を長くし、必要な効果が得られるようにしています。

ノズルのパーツ。黒い部分が吐水口にあたります。

そのほかの工夫は?
林 「三乾王(もしくは暖房換気扇)」の温風が床のどこにもっとも当たるのか、その範囲を計測して、そこにもっとも多く「きれい除菌水」を撒けるようにノズルの動きを調節しました。さらにノズルは左右に310度にわたって回転して「きれい除菌水」を散布するのですが、その回転速度を速くすることで散布量を多くし、浴室内にいきわたるようにしました。

林 そのためにも除菌水生成ユニットは、現行床ワイパーより、除菌水の散布量を約2倍弱撒くようになったため生成性能をアップさせました。また除菌水の散布量増加に従い、ノズルの回転数と動作時間が増えることになったため、ノズルの負担も大きくなると考え、パーツの仕様を変えるなどして耐久性を高める工夫も施しています。
佐藤 「きれい除菌水」の散布も一律ではなく、19秒撒いて5秒止めて、という間欠吐水を採用しました。これはなぜかというと、連続で散布すると、先に撒いた「きれい除菌水」が付近の空間に漂っている間、その後に散布された分が気化しにくくなるからなのです。そこで5秒止めるというのは、その間に先に撒いた分が気化して上昇する時間を確保するという意味があります。5秒後に再び散布された「きれい除菌水」は、滞ることなく、先に撒いた分と同じように気化できるというわけです。
気化した除菌成分は人体に影響はありますか?
佐藤 「きれい除菌水」は薬品や洗剤を使わず、水だけで生成されます。水道水質基準の範囲におさまるようにつくられており、時間が経つと元の水に戻ります。
WHO(国際保健機関)の指針では、毎日飲用可能とされている次亜塩素酸の濃度は5.0ppm(0.0005%)とされていますが、「きれい除菌水」(電解除菌水)に含まれる次亜塩素酸の濃度も5.0ppm以下です。手にかかったり、口に含んだりしても問題ありません。ご安心ください。

「きれい除菌水」の生成ユニット。浴室内に充満させるため、現行よりも長寿命化できるように性能を高めました。こちらも既存の形状やサイズは変えていません。(写真は現行床ワイパー品)
※要求仕様を設定し達成
「浴室クリアキープ」の効果は?
林 床に関しては、まず現行の「床ワイパー」と同じ要求仕様(ようきゅうしよう)※ が満たされていることを確認しました。その他の部位に関しては、新たな要求仕様を設定した後、それぞれ社内での評価、フィールドテストでは実際のお客様宅で評価を実施。その結果、要求仕様の達成を確認できました。
※要求仕様とは、システムや製品が何をすべきか、どのような機能や性能、品質を持つべきかを明確に定義した文書やその内容のこと
実際に人が住んでいる家でも「浴室クリアキープ」の効果を確かめたのですね。
林 はい、実際のお宅でも装置を取り付けて実証実験をおこないました。既存の汚れに影響されないように、最初に1時間くらいかけて私たちが既存の浴室を念入りに掃除してから設置して、効果を確かめました。暑いさなかに汗を流して掃除したのをよく覚えています(笑)。
なかには想定以上に菌の繁殖する速度が速いお宅もあって、驚くこともありました。どうも、もともとその家の周辺の空気にカビや菌が多く含まれているようで、それはちょっとレアなケースでしたね。

開発の経緯を振り返る林さん。「カビは、栄養、温度、湿度があると繁殖しやすくなるので、入浴後に床・壁・天井にシャワーをかけて栄養になる汚れを落とし、冷水で温度を下げてからしっかり乾燥させておくと、きれいな状態を保ちやすくなりますよ」(林さん)。
今後、浴室はどのように進化していくと考えていますか?
林 家事をラクにすることや、リラクゼーションという要素はますます欠かせないものになるのでは。私が今考えているのは、ウェルネス面での進化です。たとえばヒートショック予防などもそのひとつ。今あるハード(機構)はなるべくそのままで、制御プログラムの変更をメインとしてできることもあると思います。例えば家族の習慣をAIに学習させて、入浴予定の1時間前から浴室暖房機を自動で運転させてあらかじめ温めておくとか。考え方は浴室クリアキープの開発と同じかもしれません。
佐藤 タイムパフォーマンスの向上、がキーワードになるのでは。「浴室クリアキープ」も掃除の手間から解放される機能です。その分、自分で自由に使える時間が増えますよね。人体の自動洗浄とか、シャワーや浴槽などにこだわらない、新しい形の入浴習慣が生まれたら面白いですね。昨今、シャワー中にタブレットやスマホを使う人もいれば、逆にデジタルデトックスとして何もせずに入浴時間を満喫する人もいるようです。いろいろな行動パターンに合わせてもっと多様な入浴ができるようになったら、住まいがもっと楽しくなりそうです。

編集後記
浴室のカビやピンク汚れを押さえる「きれい除菌水」。それを気化させて浴室全体に働きかける、という新たな機構について初めて伺ったときは、まさに目からウロコでした。研究者、開発者の緊密なタッグが新商品を生み出したストーリーもさることながら、ひとりの生活者として、お風呂掃除が格段にラクになることにいたく感動。いつか「浴室クリアキープ」がすべてのシステムバスに搭載されることを夢見ています。
編集者 介川 亜紀
次回予告
次回は、TOTO独自のクリーン技術がもたらす「キッチンのきれいの進化」に迫ります。毎日の掃除の負担を減らし、理想の美しさを保ち続けるための、新たなものづくりの物語。乞うご期待!
2026年7月上旬公開予定。ご覧いただきまして、ありがとうございます。
これからの『開発ストーリー』を充実させたく、皆さまのお声をお聞かせください。
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