鬼怒川金谷ホテル
日本最古のリゾートホテル「日光金谷ホテル」をルーツに、1978年に金谷鮮治(ジョン・カナヤ)が、東武・鬼怒川温泉駅前にオープンした高級旅館。旅館のおもてなしと、ホテルの機能性を融合している。ジョン・カナヤの美学に基づく世界観とサービス、鬼怒川渓谷が織りなす自然美が魅力。都内にショコラトリー「JOHN KANAYA」やモダンジャパニーズレストラン「平河町かなや」も展開する。日本最古のリゾートホテルをルーツに持ち、鬼怒川温泉駅からほど近い一等地に位置する老舗高級旅館「鬼怒川金谷ホテル」。創業者である金谷鮮治(ジョン・カナヤ)の美学を継承し、「渓谷の別荘」をコンセプトにした設えとおもてなしで高い評価を受けている宿です。
「老舗といっても、ただ古いものを守り続けるのではありません。時代に合わせて設備や客室、サービスなどを柔軟に改善しています」と副総支配人の柴原明さんは話します。
鬼怒川金谷ホテルを経営する金谷ホテル観光株式会社では「老舗は常に新しい」という社是を掲げ、常にサービスやホテルのあり方を点検しています。特に最近ではコロナ禍を経て旅行の形が変化。少人数でのゆったりとした滞在を好むシニアや富裕層が増えていることや、リゾート地でくつろぎながら働くワーケーション需要が生まれたこと、インバウンド旅行者の増加などを受け、2023年に客室4室と、会議などに使用していた宴会場を全面的に改修しました。
改修で重視したのは、旅館のブランドアイデンティティをいかに実現していくかです。「鬼怒川金谷ホテルは、創業者であるジョン・カナヤの美学に基づいて世界観を構築しています。例えばエントランスにはジョン・カナヤの愛したカサブランカを飾るなど、館内の調度一つひとつに逸話が込められています」と柴原さんは説明します。
新たな客室を作る際も「ジョン・カナヤならばどうやって客人をもてなそうとしたか」を基準に、上質な設備を選んでいったそうです。水まわり設備であるトイレもその一つ。見た目だけでなく使い心地にもこだわり、ウォシュレット一体形便器のネオレストを採用しました。
改修では畳敷の純和室を、渓谷を一望できる露天風呂とベッドを備えた「グレードアップ和洋室 露天風呂付」にリニューアル。十和田石の広めの浴槽を備えた露天風呂を設置し、一人のんびりと温泉を楽しめるようにしています。
「客室内に露天風呂を設置する改修には行政への申請や届け出が多く、工事は容易ではありませんでしたが、そのぶん客室の付加価値は大きく高まりました」と柴原さんは話します。
トイレを含めた水まわりのレイアウトも従来から大きく変更。露天風呂からシャワーブース、洗面台、トイレが一直線につながるように配置しています。水まわりは一続きですが、リビングからトイレは見えないように設計されているので、トイレの出入りで気を使わずにすみます。
「ネオレストは流水音が静かなので居室へ響く心配が少ないのがいいですね。高級感のあるデザインは旅館にも調和しています」
このほか、居室内は純和室から畳にソファなどの洋風の家具を組み合わせた和洋室へと変更しました。「これから増えていくであろうインバウンドのお客様や、足腰の弱いご高齢のお客様にとっては、ソファやベッドがあれば立ち座りが楽になります。和の雰囲気を残しながらも、利便性を高められたのではないかと思います」と柴原さん。リビングにはPC作業のできるライティングスペースを設けて、ワーケーション需要にも対応しています。
06(左上):ネオレストは高級感のある客室の雰囲気に馴染む。シニアに配慮し手すりも設置している。
07(左下):シャープな印象の水栓を配置した洗面台。
08(右上):洗面コーナーからトイレは段差がないフラットなつくり。
宴会場のあったスペースは用途をガラリと変えました。コロナ禍で会議や宴会需要が減少したことを受けて、鉄板焼きをメインとした金谷流懐石料理を提供するレストランへと全面的に変更しました。
「レストランのトイレは複数人が利用するため、手洗いに自動水栓を採用して水まわりの非接触化を進めています。ここでもトイレにはネオレストを配置しています。ふたのオート開閉が備わっているほか、『きれい除菌水※』による便器の除菌などで衛生的に保ちやすい点が助かっています」
このほかにも最上級の設備ばかりですが「高級な設備を並べても、従業員一人ひとりがブランドを意識したサービスに努めなければお客様の満足度にはつながりません」と柴原さんは話します。鬼怒川金谷ホテルではブランドステートメントを全従業員で共有し、数年に一度、最新のものに改訂しています。経営層ではなく現場従業員を巻き込んで全員で考えている点も特徴的です。
ブランドを意識した丁寧なおもてなしは水まわりの清掃にも表れています。鬼怒川金谷ホテルでは「前にいた人の痕跡を残さない」「常に新しい気持ちで過ごせる」ように清掃を徹底しています。一方で、清掃に掛けられる時間は旅館ではチェックアウトからチェックインの限られた時間になっています。
「特に水まわりの清掃は清潔感につながる重要なポイントです。その意味でネオレストの清掃性の高さには助けられています。『きれい除菌水※』による便器の洗浄機能やフチ裏のない便座形状などは掃除しやすく、汚れの見落としのない清潔なトイレを保つうえで有効です」
09:宴会場を改装して新設したレストラン。旅館創業当初から利用しているデザインモチーフのタイルを使ってオープンキッチンのアクセントにしている。
10:トイレサインには改修前から用いられている瀬戸物を継承。歴史を受け継いだ改修となっている。
12:ネオレストの『きれい除菌水』『フチなし形状』などによってお手入れしやすくなった。
13:鏡の前に立ったとき、顔に影が出ないように照明に配慮している。
改修を手掛けた石井建築事務所執行役員設計部長の神部洋次さんは、全国の旅館やホテルの設計を手掛けています。「宿泊者から評価されるホテルや旅館は、おもてなしはもちろん施設管理へのモチベーションが高く、設備の状態に目を配っています。鬼怒川金谷ホテルはそんな施設の一つで、今回の大規模改修だけでなく、普段から客室や共用部での小規模な営繕を積み重ねています。見えない部分で努力をしているからこそ、ホテル独自の世界観や非日常の空間が保たれているのでしょう」と話します。
修繕しやすさという意味でも、TOTO製品は高い評価を受けています。地元の工務店や水工店で部品の在庫が豊富なため、小規模な故障でもすぐに対応がしやすい点もメリットになっていると神部さんは話します。例えば水が流れにくい、ウォシュレットが反応しないといった故障一つとってみても、高級旅館にとっては満足度につながる大きな問題であり、速やかな対応が必要。メンテナンス性が高く迅速な対応が可能なことも、ホテル設備を選ぶうえで重要なポイントになっているそうです。
鬼怒川温泉地域は2023年7月に東武鉄道の新たな特急・スペーシアXの開通などで注目度が高まっています。「鬼怒川温泉とあゆみを共にしてきた旅館として、地元を盛り上げていきたいと考えています。鬼怒川温泉駅前にカフェを併設したオリジナル焼き菓子店を開店したのも、そんな思いがあったからこそです」と柴原さんは話します。
地域を周遊する拠点となり、ともに観光地を盛り上げていく存在として、鬼怒川金谷ホテルはこれからも変わり続けていくはずです。
名 称 | 鬼怒川金谷ホテル |
所 在 地 | 栃木県日光市鬼怒川温泉大原1394 |
施 主 | 金谷ホテル観光株式会社 |
設 計 | 株式会社石井建築事務所 |
施 工 | 東武建設株式会社 |
構 造 | RC一部鉄骨造 |
延床面積 | 6,707.10m2 |
竣工(改修) | 2023年2月 |
ウォシュレット一体形便器ネオレストAS1 CES9710 | アンダーカウンター式洗面器 L 531#NW1,L 501#NW1 |
手すりコンテンポラリL型 YHR86WL #MWW | 台付シングル混合水栓 TLG10301J |
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