日本女子会館ビル
[事業主:公益財団法人日本女性学習財団]
土地建物を所有する公益財団法人日本女性学習財団の事務局を置くほか、シェアオフィスなどを運営、また約15のテナントが入居している。公益財団法人日本女性学習財団は1941年に財団法人日本女子会館として設立。以来、女性の教育・研修、生涯学習を軸にその目的・内容、また財団の名称や運営体制を時代とともに変化させつつ歴史を重ね、2011年より公益財団法人に移行。
日本女子会館は1937年に建設、日本初の宿泊を伴った女性対象の研修施設として活用されてきました。その後時代の変遷を経て、1974年に現在のビルに建て替え。築後年数の経過により、近年老朽化への対応を迫られていました。
管理・運営をする公益財団法人日本女性学習財団常務理事の藤井俊一さんは、「数年前から委員会を設置して、建て替えか改修かの検討を始めました。東京オリンピックや新型コロナウイルス等、諸々の環境変化による資材供給不足や建築費の高騰を踏まえて、大規模改修により老朽化対策と空間の有効利用を併せて実現させる方向に舵を切ることにしました」と話します。
改修は3期に分けて実施。2期目までに外壁の補修と縦引給水配管更新や屋上防水工事、全フロアの横引給排水配管更新、トイレ・給湯室の全面改修を終え、2022年1月から改修の主軸である、5階を財団専用フロアにする工事に取り掛かりました。これは、2016年に創立75周年を機に掲げた「ジェンダーの視点に立ち、男女共同参画社会の形成に向けた学習支援の事業を遂行する。そのための情報を発信し、ネットワークをもつ民間の全国的拠点として資源を有効に生かした活動を展開する」というビジョンを推進するための取り組みでもあります。
改修前の5階には、事務局や倉庫、図書室、大中小の会議室があり、テナントも入居していました。ここを財団設立時のように全国から多くの女性が集い、学び合う場所として機能させたいという思いがありました。そこで、財団事務局を縮小して倉庫機能も分散。財団が運営している女性専用シェアオフィスを6階から5階に移し、共有スペースとしてラウンジを設け、図書室も利用者と財団で共用化するなどで充実させる計画です。また、複数の壁を取り去って設ける多目的ホールは利用目的に合わせて区切ることができるように設計しました。
多くの女性が集うことを想定してトイレのレイアウトも大きく変更。以前は、女性トイレは3ブース、男性トイレは2ブースと小便器3つでしたが、男性トイレは1ブースと小便器1つに収め、女性トイレを拡充しました。トイレの設計や設備は、さまざまな利用者や用途を想定しています。
乳幼児と来館される方を想定して、広めのブースを設置し、ベビーチェアを採用。セミナーなどのために訪れた人が、別の会合に出席するための着替えをトイレで行っているという意見を汲み取り、着替え台や全身が映る鏡を採用したブースも備えました。前述したアクセサリーがないブースについても利用者が小児の排泄を介助するシーンを想定して、大便器からドアまでのスペースに余裕をもたせた、縦長配置となっています。
また、バリアフリー、ジェンダーフリーの観点から、倉庫だった場所にだれでもトイレを新設。「車いすの利用者はもちろん、必要に応じて〝だれでも〟利用できる多様性に配慮した設備を新設しました」と藤井さん。大規模改修に際してコンサルティングの立場でも参加していた安田ファシリティワークス株式会社の蓬田郁美さんは、「多様な利用者を想定しているという観点から、トイレは非常にプライオリティが高いというご意見がありました。そうした施主様のご意向をしっかりと考慮して提案、設計しました」と話します。
利用者の満足度を高めるためには、どんな人が集まる場所なのかを考え、その人が何を望んでいるかを具体的に捉えることが重要。それはトイレについても同様です。日本女性学習財団が大改修の主軸に据えた5階トイレは、財団本来の役割を踏まえた利用者目線の改修を実現したと言えそうです。
今回の改修では、テナントが入居するフロアのトイレも改修しています。藤井さんは、「器具類が古くなり、使い勝手も悪くなっていました。また配管も老朽化しており、錆つきや排水不良などを解消しなければなりませんでした」と話します。使いやすさを重視するとともに、自動水栓とペーパータオルを採用するなど、衛生面にも配慮して改修しました。
改修後、入居企業からは、清潔感があって使いやすいという声があがっています。大便器にフラッシュタンク式を採用したことで排水音が静かになったのも好印象のようです。
日本女性学習財団は、毎月のお知らせや請求書を手渡しすることを徹底しているため、改修の評価について、入居企業から直接聞くことができます。こうしたコミュニケーションの良さについて、同財団事務局総務課の大澤利光さんは、「ビルを維持する上で大切な情報は、日常的なコミュニケーションの中から得ることができると思っています。改修して終わりではなく、利用者の声を聞いて改善していくことが重要です」と話してくれました。
名 称 | 日本女子会館ビル |
所在地 | 東京都港区芝公園2-6-8 |
施 主(改修) | 公益財団法人日本女性学習財団 |
設 計(改修) | 安田ファシリティワークス株式会社 |
施 工(改修) | 安田ファシリティワークス株式会社 |
構造・規模 | 鉄筋コンクリート造(地上7階、地下1階)延床面積4,908㎡ |
竣工年月 | 1974年9月 |
改修工期 | 2021年8月~2022年5月 |
パブリックコンパクト便器・フラッシュタンク式 CFS498BM | ウォシュレットPS2A TCF5534AU |
壁掛自動洗浄小便器(発電タイプ) UFS900WR | 小便器下床材 ハイドロセラ・フロアPU AB680E |
アンダーカウンター式洗面器 L505 | 自動水栓 TENA40AW |
小型電気温水器 REW12B2DK | 自動水石けん供給栓 TLK07001J |
ベビーシート YKA25S | ベビーチェア YKA16S |
フィッティングボード YKA41R | コンパクト・バリアフリートイレパック UADAK11R1A1ADD1WA |
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