兜町第1平和ビル
[所有者:平和不動産株式会社]
証券取引所の建物を保有・賃貸する会社として1947年に設立され、現在も東京証券取引所をはじめとして大阪、名古屋、福岡の各証券取引所の建物を保有する。日本橋兜町に本店を構え、全国的にビル賃貸事業を展開する総合不動産会社。
日本の金融市場の中枢を担う街、日本橋兜町·茅場町。平和不動産はこのエリアに軸足を置き、不動産事業を展開しています。全国に保有しているオフィスビルの一つが、東京都にある兜町第1平和ビルです。もともとは証券会社の本社が置かれていた築38年の中規模ビルで、平和不動産が取得してからは改修によってビルのバリューアップを図ってきました。
その一環として今回改修に着手したのが、トイレです。もともと配管が老朽化しており、大規模修繕が必要になっていました。そこで、配管修繕の機会に併せて、トイレを全面リニューアルすることを決めたそうです。「水栓の自動化やウォシュレットの交換など必要な整備はしていましたが、デザインが古く、女性トイレのブース数が少ないなど、不便な部分も出ていました。入居企業様から『トイレを新しくしてほしい』と改善を求めるご意見をいただいたこともあり、このたびの改修になりました。トイレを整備することは、テナントリーシングにおける競争力を高めるだけでなく、既存の入居企業様の満足度の向上にもつながると考えます」と、今回のトイレ改修を主導した平和不動産ビルディング事業部の中嶋萌絵さんは話します。
さらに節水機能の強化も改修の大きなポイントです。「私たちはグループ全体で、2030年までに2018年度比で水の使用量を20%削減する目標数値を掲げ、ビル賃貸事業でもその取り組みを推進しています。トイレは節水率を高めるうえで重要なポイント。TOTOの節水診断では改修によって60%近い節水効果が見込まれるとの試算結果が出ています」。同社ビルディング事業部課長の中島祥佑さんは節水面での改善に期待を寄せます。
改修にあたって中嶋さんがこだわったことの一つが、トイレに女性の目線を取り入れることでした。
「竣工時に入居していた証券会社様は男性従業員の構成比が高かったため、女性トイレへの配慮が十分ではありませんでした。多くの企業がダイバーシティ推進の観点を重視するようになった今、これまでなかった設備も必要。そう考えて、女性の使いやすさを考慮したトイレに変更しました」
大きく変えたのが7階です。広めに設計されていた男性トイレを女性トイレと入れ替え、スペースに余裕ができた女性トイレのブース前にパウダーコーナーを設置。7階以外でも、小規模なパウダーコーナーを設置しています。
「洗面カウンターでのメイク直しは人目が気になりますし、トイレを利用した方の手洗いを邪魔してしまいます。パウダーコーナーは女性トイレに起こりやすい洗面コーナーの混雑緩和にも役立つと考えています」
デザインも一新し、近年のオフィスのトレンドを押さえて、明るく健康的な空間へ変更しています。
また新型コロナウイルス感染症流行で衛生面への関心が高まったこともあり、自動水栓の採用など自動化·非接触を心がけています。ハンドドライヤーは入居企業からの問合せと経団連のガイドラインを受けて利用を再開。ペーパータオルを使わないことで廃棄物削減にもつながり、SDGsの観点からも重要な取り組みとなっています。「トイレ改修というハード面の整備はもちろん、管理会社などとも連携しソフト面の充実も図っています。改修や取り組みがどのように評価されるか。入居企業様向けに毎年実施している満足度調査の結果を分析して、今後の管理、運営につなげていきたいです」と中嶋さん。
オフィスビルの改修工事では入居企業の業務への配慮も求められます。兜町第1平和ビルの場合、トイレの改修は隔階2フロアをセットとして夜間に行い、約2カ月で完了。入居企業の業務への影響を最小限に抑えるよう努めたそうです。
「コストを意識しつつ、より施主様のイメージに近い建材や空間をご提案しました。また、築年数が経過したビルは図面に反映されない修繕が行われていたり、想定していた以上に老朽化が進行していることもありえます。現場との連携も重視しました」と設計を担当した須賀工業の鈴木雅範さん。「今回も工事着手後、解体前には見えなかった部分で少し苦労しました。施主様や社内関係部門と打合せを重ね、要望に沿えるよう留意し工事を進めました」と、施工を担当した同社・柳澤好則さんは話します。
このほかにも兜町第1平和ビルには、先進的な試みが取り入れられています。証券会社が事務室として使用していた地下1階を改修し、金融系スタートアップ企業向けのスモールオフィス「FinGATE BASE」を2018年に開設。さらに、6階にはワークスタイルの多様化に対応するフレキシブルオフィス「XPORT(クロスポート)日本橋兜町」を開設しました。環境にも配慮し、共用部の照明をLEDに更新。電力には再生可能エネルギーを採用することでCO2排出量の削減に取り組んでいます。また、1階エントランスに設置したデジタルサイネージで、ビルで働く方や来訪者に向けて、当ビルや周辺利便施設に関する情報提供を行っています。
中島さんは一連の取り組みの意図をこう説明します。
「私どもは『人が集い、投資と成長が生まれる街づくり』をコンセプトとして掲げる、日本橋兜町·茅場町再活性化プロジェクトに取り組んでいます。その一環として、2021年に大規模複合用途ビル『KABUTO ONE』が竣工しました。今後も、再開発と変化する時代に合わせた既存ビルの価値向上を融合させることで、地域全体の再活性化に努めてまいります」
名 称 | 兜町第1平和ビル |
所在地 | 東京都中央区日本橋兜町5-1 |
施 主(改修) | 平和不動産株式会社 |
設 計(改修) | 須賀工業株式会社 |
施 工(改修) | 須賀工業株式会社 |
構造・規模 | 鉄骨鉄筋コンクリート(地上8階・地下3階)延床面積13842.75㎡ |
竣工年月 | 1983年7月 |
改修工期 | 2021年10月〜2022年5月 |
パブリックコンパクト便器·フラッシュタンク式 CFS498BM | ウォシュレットPS2A TCF5534AE |
壁掛自動洗浄小便器(発電タイプ) UFS900WR | 小便器下床材 ハイドロセラ·フロアPU AB680E |
ツインデッキカウンター MLWE | 自動水栓 TENA126A |
自動水石けん供給栓 TLK06001J | LED照明付鏡 EL80015 |
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