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魚谷繁礼展 都市を編む

展覧会コンセプト
都市を編む

私たちは、歴史都市である京都を拠点に、国内各地で町家や長屋、路地などに関連するプロジェクトに取り組んできました。そしてその取り組みを通して、これらを取り壊すのではなく、そのままの姿で保存するのでもなく、生きた都市遺構としていかに後世へと継承しうるのかを考えてきました。
京都に限らず都市や地域は、多様な事象が積み重なりつつ現在の姿となってあらわれています。そうした歴史性や地域性といったコンテクストを、ただ建築設計のコンセプト構築に利用するのではなく、そのまま空間として享受しうるような建築をつくれないか。そしてその建築は、歴史性や地域性をただ消費するのではなく、それら既存のコンテクストに新たに織り込まれながら、より豊かな都市空間や都市居住の実現へと繋がっていくものでありえないか。
リサーチでは、設計のために行うのではなく、都市のコンテクストと現況をいかに捉え、地域の未来の可能性をいかに提示しうるかに注力します。そのうえでリサーチにより得られた知見を思想的背景にしながら、過去から未来に続く時間軸における現在において、どのような建築をつくりうるかを考えます。
この展覧会では、そのようなリサーチを背景にして設計してきた建築を紹介します。また今回は、京都・五條地域で取り壊されることとなったお茶屋建築の軸組を、東京・乃木坂に移設します。建築はその場所にあり続けることに意味があると考えますが、日々町家などの建築が取り壊されている現在、都市の遺構の一部である軸組を敢えて別所にて再構築することの有意性について、この展示を通して共に考えたいと思います。
魚谷繁礼
出展者プロフィール
魚谷繁礼(うおや しげのり)
1977年兵庫県生まれ。2001年京都大学工学部卒業、2003年同大学大学院工学研究科修了。現在、魚谷繁礼建築研究所代表。京都大学などで非常勤講師。2020年より京都工芸繊維大学特任教授。京都をはじめとする国内外の歴史都市において街路街区の構造の変容と現況に関する調査研究を行う。主な建築に「京都型住宅モデル」(京都府、2007年、池井健建築設計事務所と共同設計)、「西都教会」(京都府、2011年)、「ガムハウス」(京都府、2019年)、「SOWAKA(旧美濃幸)」(京都府、2019年)、「コンテナ町家」(京都府、2019年)、「郭巨山会所」(京都府、2022年)。主な著書に『住宅リノベーション図集』(オーム社/2016年)。JIA新人賞(2021年)、北陸建築文化賞(2021年)、関西建築家大賞(2022年)、日本建築学会賞(作品)(2023年)など受賞。
©吉田祥平