システムキッチン「THE CRASSO」 2016年8月1日新発売
センスのよさと使い勝手が評判のTOTOシステムキッチン「CRASSO」。この夏、2年ぶりに全面的なモデルチェンジを実施、「THE CRASSO」として生まれ変わります。テーマは、一人ひとりの生活にとけ込んで、「リビング空間と美しい関係をつくる」。研ぎ澄まされていながら、しっくりとなじむ新たなデザインコンセプト、そしてぜいたくに注ぎ込まれた技術の粋を、今回は開発グループリーダーの喜多智とデザイン部部長の五十嵐健がご紹介いたします。
TOTO㈱
デザイン本部
デザイン第一部部長
五十嵐 健
TOTO㈱
キッチン・洗面事業部
キッチン・洗面商品開発部
キッチン商品開発二グループ
グループリーダー
喜多 智
取材・文/村上浩平
写真/山内秀鬼
開発グループリーダーの喜多智(左)とデザイン部部長の五十嵐健(右)
リビング空間と美しい関係をつくる
新しいシステムキッチン「THE CRASSO(ザ・クラッソ)」の開発コンセプトについてお話しください。
五十嵐健リモデルされるお客さまの家は、もう20~30年住まわれているんですね。当然、お客さまそれぞれにライフスタイルというものがあります。こういう空間にあこがれているとか、こういう空間が落ち着くからこういうリビングに住んでいるという、生活があるわけです。それに対してカウンターだけ、水栓だけというようにパーツだけデザインするのではなく、お客さまの生活空間をどうやってコーディネイトするか、そこを起点に考えようということから始めました。
喜多智「CRASSO」という商品は、お客さまアンケートなどをみると、デザインや水まわりの機能性で選ばれています。個々のパーツやキッチン単体のデザインをよくしようという試みは以前からありましたが、今一度生活空間の中でのあり方から見直すことにしたんです。
五十嵐コンセプトは「リビング空間と美しい関係をつくる」。システムキッチンとしての美しさを追求するだけではなく、もっと引いたアングル、広い視点でリビング全体を考えています。お客さまの生活を分析しながら、それを多様なモデルプランで「見える化」して、CMF(カラー、マテリアル、フィニッシュ)はこうだ、プロダクトはこうだ、と開発していったんです。
リビング全体から、ですか。
五十嵐空間全体の中で、妙に大きい水栓があると、そこにだけ目がいきますよね。これはリビングとの関係を壊している。お客さまの生活空間にどれだけとけ込むかを基準にして、つねに全体を見渡しながらディテールを詰めていきました。
今回から「THE CRASSO」、名前に「THE」をつけたのはどうしてですか。
喜多今回のモデルチェンジでは、従来から好評だった水まわりの機能性をさらに向上させたということから、「CRASSO」のネーミングを踏襲しました。さらにデザイン性をほかを圧倒するくらいのレベルにして、ポジショニングそのものをひきあげたいとの考えのもとに「唯一の」という意味合いも込めて「THE」という冠をつけたんです。
デザインを大きな武器にしようということですね。
五十嵐みなさん、ショールームでご覧になった瞬間に「あ、これは自分の家に合うかも」とか「すてきだな」と判断されると思うんです。そこで目に留まらないと素通りされてしまいます。でも、いい出合いがあったら、今度は興味をもって近づいてこられる。そのときになって初めて、私たちは商品の中身についてご説明できるんです。この順序は逆転しません。いろんな理屈を聞いてから「じゃあ好きです」「じゃあかっこいいです」とはならないですよね。この順序が大事だと思うんです。一目ぼれというか、第一印象のデザインが重要なんですね。
目に映るノイズは徹底的に排除した
「ノイズレスデザイン」とはどういうものですか。
五十嵐先ほど申し上げた生活空間にとけ込むデザインですが、それは同時に、とけ込まない不必要な要素、つまり「目に映るノイズ」を排除することでもあります。
喜多余計な凹凸をそぎ落としてシンプルにすることで、空間にとけ込みやすくなるんです。
水返しやバックガードをなくしてフラットなカウンターにしたそうですね。
五十嵐室内空間は基本的に水平垂直のラインで構成されているので、それに合わせるためというのがひとつ。またデザインの目からすると、ノイズをなくしたカウンターは素材が生きてくるんですね。さらに、フラットな形状をきわめることによって、今回から取り入れたクリスタルカウンターの裏面に配した「すかし模様」が引き立つんです。
喜多クリスタルカウンターという素材はTOTO独自のものですが、そのよさを最大限に引き出したかったんです。システムキッチン発祥の地であるヨーロッパでは、水返しもバックガードもないほうが普通なんですね。
作業シーンを一つひとつ洗い出し、既存の形状に求められている役割を明確にしていく。あたりまえのことを見直してみる。それも今回あらゆるパートで取り組んだところです。
「水ほうき水栓」と浄水を一体型に
「水ほうき水栓」と浄水の水栓が一本にまとまりました
喜多節水性が人気の「エアイン®シャワー」搭載の「水ほうき水栓」ですが、水ほうきが浄水でも使えるようになったので、生野菜を洗ったりするのにとても便利です。しかもタッチスイッチだから指先一本でON・OFFできます。
五十嵐デザイン的には、これも「ノイズレス」がねらいです。ふつうに考えると水道水と浄水で水栓は2本。新しく加わった「きれい除菌水」の水栓を入れると3本になってしまいます。これはいかにもノイジーなので、浄水一体型にしました。また形状も空間に合わせたシンプルなL字型デザインです。
喜多管のサイズはほとんど変えないまま、水道水と浄水両方の通り道を設け、先端にタッチスイッチを組み込む。さらに、前シリーズから引き継いだ、TOTO独自のエアイン・エコシングルのエコ技術を搭載し、加えて水がほうき状に流れる「水ほうき水栓」を組み合わせる。それらを最小限の空間におさめなければならなかったので、技術的には非常に難度が高かったですね。
「すべり台シンク」はどう変わったのですか。
喜多一定の斜度をつけて、シンクに落ちたものが排水口に運ばれるようにしたのが「すべり台シンク」ですが、こちらも前シリーズの機能を踏襲しています。そのうえで、さらなるデザインの向上に取り組みました。
五十嵐スクエアなデザインというのがベースなので、コーナーの小さなアール(曲面)にこだわりました。また、今回は人工大理石のものも、ステンレスのものもコーナーのアールが同じ形状となるようにしました。今まではステンレスのシンクのアールだけ大きかった。これもノイズですし、なぜベストなデザインで統一しないのかと。
喜多多くの主婦の方々にモニターとしてご協力いただきました。いろんなアールを試した結果、デザインの美しさと、掃除のしやすさという点で、この形状がいいということになったんです。ステンレスについては、アールのつくりの面も技術的ハードルが高かったんですが、クリアできました。
ついに「きれい除菌水」をキッチンに採用
今回はTOTOの独自技術「きれい除菌水」が初めてキッチンに採用されました。
喜多「まな板・包丁きれい」「ふきんきれい」「網かごきれい」と3つのメリットを掲げた、「きれい除菌水」の新しい使い方の提案です。たとえば、まな板・包丁を洗った後、仕上げに「きれい除菌水」をふきかけておくだけで除菌ができます。「きれい除菌水」は薬品や洗剤を使わずに、水道水からつくられるので、再び水道水に戻ります。だから環境にもやさしいのです。モニターの方のご意見では、これならワンプッシュするだけなので日々の習慣として「きれいが長持ちする」のがいいということでしたね。
「THE CRASSO」は今後どういうブランドになっていくのでしょう。
喜多まずはデザイン面で、TOTOのキッチンはやはりいいねとみなさんに言ってもらいたいですね。そのうえで、商品の裏にあるTOTOならではの品質や水まわりの技術を感じてもらいたい。使ってみたらこんなにいい、と実感していただきたいです。そのベースはできたと思うので、新しいポジションを得て、さらによくしていきたいと思います。
五十嵐水返しの話もそうですが、常識とされていることを当然のこととしてやっていると進歩がない。少しずつですが、人の嗜好や暮らしは変わっていきますよね。前のまま踏襲しつづけていると、だんだん商品と実際のニーズとのギャップが広がってくるんです。変わっていくものに対して、ひとつずつ、とことん見直して解を見つけていく。そうすることが、これからも私たちの大切なテーマだと考えています。
キッチンのきれいが長持ち
「きれい除菌水」がキッチンまわりを清潔に保つ
「きれい除菌水」※1は水道水※2に含まれる塩化物イオンを電気分解してつくられる除菌成分(次亜塩素酸)を含む水です。薬品や洗剤を使わず、水道水からつくられます。時間がたつと水※3に戻る※4ので環境にやさしいのが特長です。
※1/試験機関:㈶北里環境科学センター、試験方法:電解水の除菌効力試験、除菌方法:電解した水道水と菌液を混合し除菌効果を確認、試験結果:99%以上(実使用での実証結果ではありません)、効果・効能:「きれい除菌水」は、汚れを抑制するもので清掃不要になるものではありません。使用・環境条件(水質・材質・形状など)によっては、効果が異なります。水道水を除菌したという意味ではありません。※2/水道水(水道法で定められた水)です。井戸水の場合、塩化物イオンが少ないため十分な効果が得られないことがあります。※3/水道法の水質基準に合致した水です。※4/試験機関:(財)日本食品分析センター※5/試験機関:(株)衛生微生物研究センター、試験方法:除菌効果試験、除菌方法:電解した水道水により洗浄、対象:樹脂製のまな板・スレンレス製の包丁、試験結果:99%以上(実使用での実証結果ではありません)※6/試験機関:(財)日本食品分析センター、(株)東レリサーチセンター※7/試験機関:(財)日本食品分析センター※8/試験機関:(株)衛生微生物研究センター、試験方法:除菌効果試験、除菌方法:電解した水道水により洗浄、対象:樹脂製のまな板・ステンレス製の包丁、試験結果:99%以上(実使用での実証結果ではありません)、使用方法:台所用合成洗剤など中性洗剤で汚れを落とした後、「きれい除菌水」を12秒噴霧。使用・環境条件:水質・材質・形状などによって効果が異なります。すべての菌を除菌できるわけではありません。食中毒を予防するものではありません。木製まな板は除菌できません。
Igarashi Ken
いがらし・けん/1971年山形県生まれ。96年東京造形大学卒業後、96年東陶機器(現・TOTO)入社。レストルーム商品、機器商品、浴室商品のデザインに従事。2015年より浴室に加え、キッチンのデザインを担当。16年より現職。
Kita Satoshi
きた・さとし/1973年千葉県生まれ。96年早稲田大学卒業後、96年東陶機器(現・TOTO)に入社し、キッチン開発課に配属。2001年よりキッチン商品開発グループ。以来、キッチンの商品企画、開発、改良業務に従事。15年より現職。