もっと楽しく、もっとかっこよく、もっと豊かに

 市内の戸建て住宅受注でトップに躍り出たことについて、古澤さんは、「一番にはなりたいと思っていました。経営者ですからね、欲はありますよ」と笑うが、そもそも他社と競うことに重きを置いていないようにも見える。トップになった要因については、「商品がわかりやすいこと」のほかに、「会社の規模がちょうどいいこと」を挙げてくれた。逆にいえば、トップになったからといって会社の規模を大きくするつもりはない、という意思表示でもある。それは「お客さんが喜んでくれて、利益が出て、社員も喜ぶ、健全な経営で適正な利潤を得るのが自分の役目」、あるいは「会社の身の丈に合った経営を」という社長としての縛りがなせることなのかもしれない。
 だが一方で、現状にとどまることなくアンテナを張りめぐらせる古澤さんの感性も大きく作用しているようだ。「もっと楽しく、もっとかっこよく、もっと豊かに」という好奇心にあふれた感性。
 ひとつ、おもしろい点に気づいた。古澤さんが現れたときの現場の空気だ。社長の登場は当然若手スタッフたちを緊張させるが、どことなくみな、うれしそうなのである。尊敬、憧れ、席をともにできる喜び。緊張感とともに心地よい活気が満ちる。「ほとんど辞める人間がいない」という定着率の高さは、どうやら待遇面ばかりが要因ではなさそうだ。数字をしっかり残しながら、数字ではないものを追い求める経営者。若いスタッフを引きつける社長の魅力が、チームとしての豊栄建設の魅力に、そして底力につながっているとみた。

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