明快なコスト体系を持続して会社の信用を高めていく

 豊栄建設の創業は1978年。創業社長の古澤政治さんが、24歳で起業し、最初の15年ほどは自社ブランドをもたず、他社の工事を手がけていたそうだ。だが「やはり自分たちで考えてつくったほうがおもしろい」と、少しずつ自社モノにシフト。96年の「チャレンジ999(キューキューキュー)」の開発・発表にたどり着く。
「後発で知名度もない、お金もない、という状況で生き抜くために、まず『1000万円を切るもの』をやろうと考えたんです」
 この「チャレンジ999」は、現在も同社の中心商品。システムは明快で、建物の本体工事価格を標準仕様で一律に999万円に設定する。設計段階で標準仕様とオプションを明確に分けて提示するため、最終的に「予想外」の金額になることがない。依頼者は、自分たちの希望がどのように価格にはねかえるかを確認しながら、仕様を詰めていくことができる。
 驚くのは、時代とともに標準仕様のレベルを高めながら、999という数字が15年以上変わらないことだ。古澤さんは「TOTOさんをはじめ、メーカーが昔よりいいものを安く提供してくれるから」と控えめだが、スケールメリットを生かして部材を一括購入するなどローコスト化の努力は欠かせない。その一貫した姿勢は、「昔は安さを求めて人がやってきましたが、今はもう少し余裕のある人にも来てもらえるようになりました」という、客層の変化に結びついている。
 現在の受注平均額は1800万~2000万円。999の安さだけを求めているのではないことは明らかで、会社の信用度の高まりを示している。

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