特集/ケーススタディ4

空間に、変化とバリエーションがあるプランは成約率が高い

―― 以前、髙木さんに話を聞いたとき、賃貸集合住宅は1階が問題で、下に入居者が入れば上の階も入る、それほど1階のプロテクトのしかたは難しいとおっしゃっていました。bloccoではまず外側に中が丸見えにならない2枚重ねのエキスパンドメタルの壁があり、その内側にまた玄関扉があるという二重のプロテクトがかかっていて、しかも入り口がオープンエア。そのへんがうまくできていますね。
長田 ただ、あのエキスパンドメタルの壁は本当に必要だったかなと反省したことは事実です。表通りは交通量が多いから、まったくなくすかどうかはともかく、もう少し開いた状態でプライバシーを守る方法があってもよかったと思いますね。
―― 南側はいい感じですね。あちらが玄関でもよかったのでは?
長田 まあ、道路付けや駅からのアクセスを考えると北側が入り口にならざるをえないんですが、いつも建物の裏側をつくりたくない、すべての面がファサードだと考えて設計したいと思っています。
―― 拝見したのは1階ですが、3階から上はまたプランががらっと違っていますね。
長田 はい、先ほど話に出た「十字プラン」です。つねづね、ワンルームをフリーに使えると同時に、同じ場所に違う空間がセットされているようなものをつくりたいと考えていますが、十字にすることで外部空間があいだに入ってきて、窓もたくさん設けられ、まわりの風景がちらちら見えるものがつくれるという意図もありました。
―― この小ささで3つの場ができていて、見通すと空間が積層して距離感が出ます。境目は、梁が上から下りてきていますね。
長田 はい、フラットに空間をつなぐのではなく、分節がありつつ、つながっている状態をつくり出そうとしています。テクスチャーを替えているのもそのためで、建具で仕切ることもできます。
髙木 僕はやはり成約率がいつも頭にあるんですが、こういう空間に変化があってバリエーションが豊富なプランだと、ホテル選びと同じで、選ぶ側は楽しい。昔の安藤色が強かった頃の長田さんだと、もっと垂直水平な感じだったんですが、イタリアに留学して帰ってきてから、うまさが変化しましたよね(笑)。
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