- ―― 長田直之さんとは、どうやって知り合われたのですか。
- 髙木 知り合いが、大阪におもしろい建築家がいるから紹介すると言って、うちの事務所に連れてきたんですよ。まだ師匠の安藤忠雄色が強い頃ですね(笑)。その後、1999年から計6回、「TPOレコメンデーション」という賃貸マンションの設計コンペを主催した時期があるんですが、その1回目に長田さんも招待しました。クライアントがいて、数名のなかから勝ち取った建築家が設計するという実施コンペです。長田さんの案は合理的で計算を解くようにうまくできたプランだったのですが、オーナーの住居が1階にあったのでいやがられて、残念ながら選外でした。
- 長田直之 隣が公園で、オーナーの奥さんが自宅で事務所を開きたいという話もあったので、1階しかないだろうと思いましたが、今考えると、僕も若かったですね。賃貸マンションのオーナーは最上階に住みたがるものだということを、後になって知りました(笑)。
- 髙木 でも、そのときうまかった印象があるから、すぐ別の仕事を頼みました。芦屋の「CUR」(2003)というワンルームマンションです。
- 長田 各部屋が「くの字」に折れ曲がっているんです。
- 髙木 そう、手前から奥を見ると視界が切れて、見えない部分ができるのがいい。僕は意外と、プランをずうっと覚えているんです。
- ―― この「blocco」も同じコンペで選ばれたものなんですね。
- 髙木 はい、03年の5回目です。オーナーはここでお父さまの代から経営していたガソリンスタンドを閉めてマンションを建てようと計画中で、相談を受けていました。ちょうどコンペの時期とタイミングが合ったので、やってみましょうということになったのです。
- ―― 長田さんの案が選ばれた決め手は?
- 髙木 審査員もオーナーも評価した最大のポイントは、上層階に採用されている独特の「十字プラン」(4階平面図参照)というのがフレキシブルに使えるいいプランで、マーケットでは強いだろうという点です。ただ外壁量が多いから建設費がかさむのではという心配はありましたが、ここはじつは、全戸床暖房付きで坪単価70万円でできているんですよ。
- ―― それは工務店の努力ではなく、建築家のおかげ?(笑)
- 髙木 設計のおかげでしょう。そのへんも長田さんはうまいんです。
- 長田 コストコントロールはうまいです、自信あります(笑)。
- 髙木 それから、オーナーは街並みからあまり浮かないデザインが気に入っていましたし、人柄も大きいんじゃないでしょうか。オーナーと建築家の相性はけっこう大事で、いつもそこはよく見きわめますが、ここでは打ち合わせも終始楽しく進められましたから。