特集4/ケーススタディ

木造でスケルトン・インフィルを極める

 徹底的な合理化は、厳しいコストのハードルを越えることにもつながった。東京都の「広さと質を確保した住宅を、現状より3割程度安く供給したい」という考えが前提条件であった。具体的には、延床面積が40坪の住宅を、税込み2000万円で販売するというもの。50万円/坪である。もちろん、このなかには工務店が得る適切な利益も含まれる必要がある。
 野沢さんは「単価の根本のところまで知り、工事の手順を議論しました。工務店レベルで設計を詰めていったことは初めて」とふり返る。材料と性能を担保しながらコストダウンするには、工事業者と協働しながら人工手間を減らす道を探るほかない。たとえば、床仕上げの施工。フローリングを間仕切り壁よりも先行して一気に張り上げることで、通常は6坪/人程度のものが、15坪/人と約2.5倍のスピードが達成された。「スケルトン・インフィルのメリットが予想以上にみえた」と野沢さんは語る。造作類も大工工事で対応し、工種を抑えている。
 ただ、モデルハウスを建てる前に、実験的に同じ工法で1棟をつくってみたが、コストが収まらなかったという。外断熱・真壁造の仕様を、充塡断熱・大壁造にする設計変更を加え、さらに1度に2棟ずつ建てることに決定。これで格段に人工が減り、実現の目処が立った。
 相羽建設迎川利夫さんは「内装関連の工事がとくに圧縮され、最終の第7期工事では約69人工となりました。さらなる短縮の見込みもあります。普通は40坪の建物では140人工ほどがかかりますから、半分以下の手間になったということです」と説明する。
 工事中も現場の声を反映させながら改良を適宜繰り返した。当初はMDFで製作していた間仕切りを、軽鉄LGSのスタッド+石膏ボード下地のうえ和紙クロス張りに切り替えたのはその一例である。搬入の手間がかかることと反りが出ることと電気配線の問題を考慮してのことだった。
 また、コストを抑えるために材料からのアプローチも行われた。都の要件で、構造材に多摩地方の木を使うことがあったが、杉材を取り扱う地元の企業は小規模なところが多く、乾燥設備が整っていない。それで、簡易型の含水率計とヤング係数測定器で含水率と強度を1本ずつ計測。強度のバラツキに応じて木配りすることで、材料をむだなく使うことができている。

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